東野圭吾「ガリレオの苦悩」



ガリレオの苦悩 (文春文庫)

ガリレオの苦悩 (文春文庫)


“悪魔の手”と名のる人物から、警視庁に送りつけられた怪文書。そこには、連続殺人の犯行予告と、帝都大学准教授・湯川学を名指して挑発する文面が記されていた。湯川を標的とする犯人の狙いは何か?常識を超えた恐るべき殺人方法とは?邪悪な犯罪者と天才物理学者の対決を圧倒的スケールで描く、大人気シリーズ第四弾。



バカミスの風を感じる。


一読「よく調べたなーつーかこれバカだなー」という感想しか出てこない、物理トリックを駆使しまくったガリレオ短編集。つーかあまりに極まった極北の物理トリック目白押しの作品ばかりなので真相を見破るとか見破らないとか、正直どうでもよくなってきます。(おい) ワシのよーなボンクラバカミス脳の人間としては、東野せンせの尽きることのないミステリへの情熱に頭を垂れることしかできぬわけですよ。その道の専門知識がないとわかるわけねーよ!というツッコミは置いておけ。東野せンせの極まった本格ミステリへの情熱に恐れおののくが良い。

東野圭吾「真夏の方程式」



真夏の方程式 (文春文庫)

真夏の方程式 (文春文庫)


夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もう1人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは―。



ガリレオ長編。短編とは打って変わってこちらは真っ当(という言い方が適当かどーかは知らぬが)な本格ミステリとなっております。錯綜する人間関係から生まれるドラマ性とか、こーゆー盛り上げ方はさすが東野圭吾と言わんばかりで話をぐいぐい引っ張りますことよ。湯川せンせが思いのほか子供好きでさらに世話焼きさンということがよく分かる大変いいお話であった。少年・恭平の成長譚とも言えるな。


とはいえ過去の長編「容疑者Xの献身」「聖女の救済」に比べると随分と大人しい印象も。過去作はあからさまな犯人が登場していたのに対し、本書では誰が犯人かは最後まで伏せられてる(多少想像はできるけど)のだけど、真相&トリックのインパクト度合いではちょっと過去作に落ちるかなーという気がします。真相に至るドラマ性とか入り組み具合とかは過去2作よりも本書の方が格段に上だと思うけど。まぁこれは好みの問題かしらね。やるせない中にも一抹の希望をもたせるこのストーリーの運び具合はさすが東野圭吾やで。


というわけで短編とはまったく違う印象の湯川せンせを堪能したい人は迷わず読むがよいよいよい