デュレンマット「失脚/巫女の死」



失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)

失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)


いつもの列車は知らぬ間にスピードを上げ……日常が突如変貌する「トンネル」、自動車のエンストのため鄙びた宿に泊まった男の意外な運命を描く「故障」、粛清の恐怖が支配する会議で閣僚たちが決死の心理戦を繰り広げる「失脚」など、本邦初訳を含む4編を収録。



おお、これはすごいぞ。


4編から成る短篇集なのですが、どれもこれもバリエーションが異なるクセの強い作品ばかりで実にワシのツボをつく内容でありました。日常から突如非日常に変化する不条理的幻想小説の味わいの「トンネル」、登場人物全てが記号で表現される実験小説的手法で粛清の恐怖を描写し安定のオチに到達する「失脚」、ハイテンションで繰り広げられる擬似法廷によって到達するある真実「故障」、ギリシャ神話をモチーフした世界観にて割と適当な託宣を下してた巫女の死の間際に展開されるオイディプス王と愉快な仲間たちの悲喜劇「巫女の死」。全て一筋縄ではいかないお話だけどすげぇ面白くてびっくりですよ。個人的にはとりわけ「故障」がツボ。


1000円とちょいと厚さの割にお高いですが、クオリティがハンパないので値段分以上に楽しめること請け合い。これはオススメですぜ