小説感想 石持浅海「BG、あるいは死せるカイニス」



BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)


天文部の合宿の夜、学校で殺害されたわたしの姉。男性化候補の筆頭で、誰からも慕われていた優等生の姉が、どうして?しかも姉は誰かからレイプされかけたような状態で発見されたが、男が女をレイプするなんて、この世界では滅多にないことなのだ。捜査の過程で次第に浮かび上がってきたとは果たして何を指す言葉なのか?そして事件は連続殺人へ発展する───。全人類生まれたときはすべて女性、のちに一部が男性に転換するという特異な世界を舞台に繰り広げられる奇想の推理。破天荒な舞台と端整なロジックを堪能できる石持浅海の新境地!



同時期に出た「水の迷宮」はちとイマイチでしたが、この「BG、あるいは死せるカイニス」は実に秀逸。ワシが大好きな「一定のルールに支配された世界を構築し、解体する」という手法を用いた作品には傑作が多いのですが(山口雅也の「生ける屍の死」とか、初期の西澤保彦のSFミステリとか)、本作もそれらに肩を並べるほどのナイスな作品になっております。


系統的にはハウダニットものではなくホワイダニットものなので、トリックよりもロジックに重きを置いた内容になっているのですが、設定自体がかなりトリッキーなので予想以上のサプライズを得ることができましたよ。いや、実に面白かった。つーわけでオススメ。