小説感想 山田風太郎「江戸にいる私」




ある正月、藪井正一は妻と息子の笑いを期待してチョンマゲのかつらを被って祝膳についたが相手にされず、激論の末立腹した彼は、酒をがぶ飲みし泥酔状態に陥った。頭の中は江戸の田沼時代にタイムスリップ。あまりの環境の変化にとまどいつつも何とか適応しようと努力し、さらには腐敗した社会を建て直そうと野望まで抱く。が、突如、江戸の家庭内の礼儀のすばらしさに感心し、野望はもろくも崩れてしまう。



バカありシリアスありの時代もの短編集。


初っ端の「山田真竜軒」とか荒木又衛門とかカッチョイイ鎖鎌使いを扱っているくせに、何とまぁバカな話になってしまったことか。(もちろん誉めてます) 文体が異様に軽いんですが、執筆時に何か嫌なことでもあったのか山風。オチは山風らしい終わり方でステキ。


他には「明智太閤」も結構よかったっす。歴史の「もし明智が天下を獲っていたら」というifに挑戦した内容です。成り上がっていく明智が大変愉快なのですが、あまりと言えばあまりなオチで大爆笑。やるな山風。


そして表題作「江戸にいる私」。よくある「タイムスリップして来たから未来のことが全てわかるゆえサクセスストーリーを歩む俺って超イカス!」というありがち設定に真っ向勝負を挑んだ快作。(それはそうと文章にセンス無さ過ぎですよワシ)
何をどうあがこうが歴史は変わらん、という山風イズムが超ステキ。




結構面白かったとですよ。
そりゃー忍法帖の短編集とかに比べるとランク落ちますけど(;´Д`)
それなりにオススメです。