小説感想 芦辺拓「赤死病の館の殺人」



赤死病の館の殺人 (カッパ・ノベルス)

赤死病の館の殺人 (カッパ・ノベルス)


これぞ「探偵小説」の醍醐味!
奇怪な館に迷い込んだ少女、七色の部屋をさまよう怪人、黄昏どきの不可能犯罪───そして振りまかれる"赤き死"。深夜の山荘には血に笑う道化師が出没し、田舎町の警察を唐突きわまる死体と意外すぎる犯人が騒がすかと思えば、完全な監視下にあったはずの密室では、嫌われものの老博士が鋼鉄製のロボットに見下ろされて息絶えていた…。
黄金時代本格の後継者・芦辺拓が描き出す四つの謎めく物語。まさに王道をゆく正統派名探偵・森江春策の推理と冒険の行方は?



中々の好短編集。


4編から構成される、森江春策シリーズの短編集。
どの話も密度が濃いミステリで、かなり楽しめました。
では以下、各作品に対しミニコメを。


「赤死病の館の殺人」


これだけ中篇クラスの長さ。
全体的に乱歩ちっくといいますか、エッセンスだけを抽出したならば黄金時代本格の内容まんまですな。
後半の展開がちょっと急ぎすぎっつーか取ってつけたよーな内容なのがちょっと勿体無い。


「疾駆するジョーカー」


とりあえず館の見取り図がツボ。(ミステリには館の見取り図は必須です)
芦部氏の社会観が垣間見えるナイスな作品です。


「深津警部の不吉な赴任」


どんでん返しにつぐどんでん返し。
本収録作の中ではこれが一番かな?
それにしても犯人の人はウッカリしすぎです。


「密室の鬼」


いっそのこと遠隔操作でロボットを操作して殺人を犯した、ってことでもよかったのに。(それは森博嗣のジャンルです)
この手の密室はある程度パターンが確立されていますので、犯人推定は結構容易かも?




現在は文庫になっているよーですので、気になる方はそちらをチェキ。