小説感想 「日本探偵小説全集10 坂口安吾集」



日本探偵小説全集〈10〉坂口安吾集 (創元推理文庫)

日本探偵小説全集〈10〉坂口安吾集 (創元推理文庫)


「風博士」で認められた坂口安吾は戦時中、犯人当てゲームで迷探偵ぶりを発揮していた。「アンゴウ」は謎の解明が感動を呼ぶ傑作。長編『不連続殺人事件』はその筆力とともに心理的なトリックを仕掛けて成功、古典的名作となり、戦後文壇の巨星安吾が同時に探偵小説の理解においても卓越していることを示した。『不連続』の名探偵、巨勢博士の登場する「選挙殺人事件」は奇妙な味のする超探偵小説。また主人公結城新十郎に配するに、維新の英傑勝海舟をもってした『明治開化
安吾捕物帖』も見逃すことはできない。ここにはその中から好編を選んで収める。



予想以上の面白さ。


有名な「不連続殺人事件」が読みたくて手にとったのですが、いやはやどーして。
他の収録作品も面白かったですよ。
つーか「風博士」のインパクトがありすぎ。何ですかこの狂った話は。


まあ目玉作品が「不連続」なので、その感想をば。


雑誌に掲載されたのが昭和22〜23年と、いわゆる「古典」の時代に生み出された作品なのですが…。なんですかこのフェアプレイっぷりは。読者に真っ向からガチンコ勝負を仕掛けていますぜ。
雑誌掲載版をそのままトレースしていますので、安吾による「挑戦」も完全収録。推理の手がかりは完璧に作品内に収められているので、読者は探偵役・巨勢博士同様の立場で推理を行うことができます。


しかし、「思考遊戯」としてのミステリに徹底的に拘った内容なので、登場人物たちが、その、なんだ。


狂人揃い。


冒頭から奇妙奇天烈なバテレン狂人が多々登場し、怒涛の勢いで殺人・殺人・また殺人。
「おいおい大盤振る舞いだなぁ坂口安吾先生!収集つけられんのか?」と、思っていたのですが…。
見事、解決編ではキッチリと作中の伏線を拾い集め、美しい推理が展開されました。
素晴らしいとしか言いようがないよ、もう。


こーゆー王道っつーか覇道を行くミステリを読むと何だかとっても満ち足りますな。
多少古臭いのもまた味があって良し。いやー面白かった。