小説感想 ディクスン・カー「緑のカプセルの謎」



緑のカプセルの謎 (創元推理文庫 (118‐9))

緑のカプセルの謎 (創元推理文庫 (118‐9))


小さな村の菓子屋で毒入りチョコレートが売られ、子供たちのなかから犠牲者が出るという珍事が持ちあがった。ところが、犯罪研究を道楽とする荘園の主人が毒殺事件のトリックを発見したと称して、その公開実験中に、当の御本人が緑のカプセルを飲んで毒殺されてしまった。事件も単調、関係者も少数であったが、関係者は、それぞれ強固なアリバイを証明しあうので、謎の不可解性は強くなるばかり。さて、カプセルを飲ませた透明人間は誰か?作者が特に「心理学的手法による純
推理小説」と銘うつ本編は、フェル博士の毒殺講義を含むカーの代表作。



さすが不可能犯罪の巨匠・カー。


いつもながらの微妙なロマンス要素が邪魔くさいったらありゃしない、といった感がありますが…。まごうことなき超一級の不可能犯罪を扱った本格ミステリですよこいつぁ。さすがカー、さすが不可能犯罪のマエストロ。
でも「毒殺講義」は別にいらんよーな気もしましたが…(;´Д`)


衆人環視の状況で発生した毒殺事件という、実にシンプルな事件。しかも登場人物も少な目。でも、関係者全員にアリバイがあるという、不可能犯罪ぶりが超ステキです。トリック自体はそんなに吃驚するようなことはなかったのですが、心理的な要素を巧みに織り交ぜ読者を煙に巻いているあたり、カーの熟練のスキルを感じますな。


オカルト要素が完全に排斥されていますが、カー中期の代表作といっても過言ではないでしょう。
シンプルな謎ゆえに、解決編が際立っているのがナイスです。