小説感想 ミステリー文学資料館・編「甦る推理雑誌⑤『密室』傑作選」
- 作者: ミステリー文学資料館
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/03/12
- メディア: 文庫
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1950年代前半のミステリー界は同人誌の活動が盛んだった。なかでも、'52年8月に創刊された「密室」は、その華やかさと内容の充実とで、とりわけ目を引くものだった。
本巻では、鮎川哲也「りら荘事件」の原型をなす「呪縛再現」、天城一の傑作長編推理「圷家殺人事件」他を収録する。
いずれの作品にも、同人誌ならではの熱気が満ちている。
完っっっ全っっっにミステリマニア向けの本。
だが それが いい。 (いいのか)
あらすじ読んで「呪縛再現が収録されてるーっ?」とか「天城一の長編だってーッ!?」とか思った方は即行で買い、そーでない方はスルー推奨。もうこれ以上ないってくらいに人を選ぶ本ですね(;´Д`)
天城一と鮎川哲也で結構ページが割かれていますので、どーせなら別冊か何かでもっと密室で活躍した他の作家の短編を収録してはくれないものか。知られざる傑作が結構眠っていると思うけどなぁ。どーでせう光文社さん。
では上記2作へのミニコメを。
「呪縛再現」
鮎川哲也氏の傑作「りら荘事件」の原型となった中篇。原型とはいえ、「りら荘事件」とはかなり違った印象を受けました。だって前半は星影探偵、後半は鬼貫警部がメインを張っているんですもんよ。(「りら荘事件」には鬼貫警部は登場しません)
序盤は真っ当な本格風味のミステリとして進むのですが、後半鬼貫が登場するや否や突如として時刻表を駆使したアリバイ工作ものにメタモルフォーゼしてしまったのはちょっと苦笑。(いや面白いんですけど)
鬼貫警部が嬉々としてアリバイ崩しを図っている様は萌え、としか言い様がないと思うがどうか。(えー)
個人的には「りら荘事件」の方が好みかなぁ、やっぱり。「呪縛再現」にも味はありますが…。
「圷家殺人事件」
タイトルは後に「Destiny can wait」に改題されたそーです。本作は天城一の長編、ってことで興味を持ち読んでみましたが、思った以上にエンターテインメントしていて面白かったですよ。密室ものだったし、割と意外性もあったし。(でも登場人物が少ないので終盤には犯人に気づくかも)
「密室犯罪学教程」のよーな研ぎ澄まされた文体ではないので、教程に拒否反応を示した人でも楽しめるかもだ。
しかしこの場合のエンターテインメントはあくまでも古典的内容として、ということなので過度の期待は禁物かもだ。(どっちだよ)
総括としては、まあマニアなら読んでおけ、ということでひとつ。