小説感想 山田正紀「ミステリ・オペラ」




平成元年、東京。編集者の萩原祐介はビルの屋上から投身、しばらく空中を浮遊してから墜落死した。昭和13年満州。奉納オペラ『魔笛』を撮影すべく<宿命城>へ向かう善知鳥良一ら一団は、行く先々で"探偵小説"もどきの奇怪な殺人事件に遭遇する。そして50年を隔てた時空を祐介の妻・桐子は亡き夫を求めて行き来する……執筆3年、本格推理のあらゆるガジェットを投入した壮大な構想の全体ミステリ。



す、凄すぎるっ!


本書で山田正紀は「日本推理作家協会賞」「本格ミステリ大賞」「本格ミステリ・ベスト10 第1位」「このミス 第3位」という記録を打ち立てているわけなのですが、なるほど読んで大納得。冒頭の幻想的な謎の提示から、暗合メタミステリ要素や暗合、オーソドックスな首無し死体・密室など、ミステリの持つ魅力的な要素をこれでもかとばかりに詰め込み、そしてSF的解決に逃げることなく最後までミステリとしてキッチリと世界を閉じきっていました。


ミステリプロパーの作家でもないのに、これだけのモノを完成させてしまうとは山田正紀恐るべし。読む前のイメージではSF要素とかをもっと取り込んだ異形のミステリかと思っていたのですが、割と真っ当なミステリで逆にちょっと意表をつかれました(;´Д`)


個人的にちょっと勿体無く感じたのは、作中作の導入部分かな。せっかく虚実入り混じった構成にしているので、何も作中作開始時点で「ここから開始ですよ〜」みたいな文章で教えるこたーねーだろーと。この部分を外すだけでもっと混沌とした感じが出たと思うんだけどなぁ。その部分だけが惜しく思いました。(読みやすくはありますが)


異様に長いのが本書の特徴ですけど、読了したところ無駄に長い気はあまりしませんでしたよ。作中作とか色々と凝った作りになっているので、ある程度の尺が必要な構成ですしね。値段分以上の満足感は与えてくれるミステリだと思います。大傑作なのでミステリファン必読の書、さあ読め読め、読めったら読めっ!