小説感想 ポール・ギャリコ「幽霊が多すぎる」



幽霊が多すぎる (創元推理文庫)

幽霊が多すぎる (創元推理文庫)


重すぎる相続税に対処するため、カントリークラブとして開放されたパラダイン館。だが、持ち主の貴族一家が安心する間もなく、奇怪な現象が続発する───部屋をひっかきまわすポルターガイスト。うろつく尼僧の亡霊。外から鍵をかけた部屋で、夜な夜なひとりでに曲を奏でるハープ。さらに、客人の身に危害がおよぶにいたり、事態はただならぬ様相を見せはじめた!騒動を鎮めるために駆けつけた心霊探偵ヒーロー氏の活躍やいかに?『スノーグース』『雪のひとひら』などで知られる心やさしきストーリーテラーが、ユーモアとペーソスをこめて物語る、幽霊事件の意外な顛末。ギャリコ唯一の長編本格ミステリ、ついに登場!



全体的に雰囲気がとっても暖かい、それでいて本格のコードにきっちり則ったオーソドックスなミステリ。


いや、予想以上の面白さでしたよコレ。貴族の館、一癖ある登場人物たち、館で発生する怪現象、事件に取り組む名探偵。オカルト要素に真っ向から取り組む様は、まるでディクスン・カーちっく。多種多様の怪現象はまさに「幽霊が多すぎる」というべきもので、各現象の関連性とか、現象のトリックなど、隅々まで本格ミステリの作法に従って構成された良作でした。


オカルトを扱っているとはいえ、ギャリコの持ち味なのか作品全体がとっても暖かい雰囲気。特にインパクトがある作品というわけではありませんが、割と癒される内容ですので、まあ癒しを求めている方にオススメかな?マニア向け、ってこともないけど、無理して読むこともないかなぁ、というレベルです。小説として完成度が高いゆえ、普段ミステリ読まない人とかに勧めやすいかもだ。