小説感想 深堀骨「アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記」
アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
- 作者: 深堀骨
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/08/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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その街では、謎の奇病「バフ熱」に冒された男が食用洗濯鋏に余生を捧げ、「蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼」の三面記事ほどに陳腐な溜め息を吐くコインロッカーがあった。しかしときには、加藤剛をこよなく愛する諜報員が「隠密行動」を展開し、国際謀略に巻き込まれた茸学の権威「若松岩松教授のかくも驚くべき冒険」が繰り広げられる街。謎の物体「飛び小母さん」が目撃者たちの人生にささやかな足跡を残し、とある人妻とマンホールが哀しき「愛の陥穽」に堕ちたのもまた、この街の片隅だった。あるいはまた、「トップレス獅子舞考」が試みられた風俗発祥の地、江戸幕府を揺るがした「闇鍋奉行」暗躍で歴史に刻まれる街───そう、柴刈天神前。このありふれた街と人に注がれた真摯な眼差しと洞察をもとに、現代文学から隔絶した孤高の筆が踊り叫ぶ、愛と浪漫と奇跡の8編。
狂っている、とはこーゆーことかっ!
真面目な顔して嘘を吐くっつーか、そもそもの前提条件が間違っていると言いますか(;´Д`)
空前絶後の言語センスに彩られた本書、さすがは「このミステリーがすごい!2004年度版」のバカミス大賞に輝いただけのことはありますな。(受賞コメントに代わる「松下由紀に興味はない」という文章がまた実にステキ極まりないです)
「本を読む」という行為に何がしかの意味を求めるタイプの方は、本書を読むと恐らく激怒すると思いますが…。くだらない本を読んで無駄に時間を浪費することに情熱を燃やすタイプの方には必読の書と言えるでしょ。
それでは短編集なので例によってそれぞれミニコメをば。
「バフ熱」
そもそも「食用洗濯鋏」を作ろうという行為自体が狂っている、と思います。すげぇアイディアだ…。
「蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼」
どいつもこいつも狂人揃いで、ああもう超ステキ!つーか何気に酒場のマスターが一番狂っているな。
「隠密行動」
主人公の諜報員が加藤剛(大岡越前の中の人)の大ファンである、という時点でやられました。
しかもストーリーの大事なところでその設定が生きてくるし!
「若松岩松教授のかくも驚くべき冒険」
キャラクターのネーミングセンスが先鋭的すぎると思うのですが(;´Д`)
作中の暗殺者が使う武器が以外すぎて爆笑。どーやってそれで暗殺すんだよ!
「飛び小母さん」
冒頭からはとても想像つかない無難なオチ(?)に到達させるあたり、作者のスキルを感じます。
いやまあ狂っていることには変わりないんですが(;´Д`)
「愛の陥穽」
これだけ他の作品に比べて狂気度が低いかなぁ。つまんないわけじゃないけど。
「トップレス獅子舞考」
「トップレスで、しかも獅子舞だ」の文章にハートを鷲掴みされました(;´Д`)
本作の個人的ツボ作品そのいち。論文調で書かれているのですが、あきらかに論旨おかしいし、私怨入ってるし、そして何よりオチが素敵すぎ。大好きです。
「闇鍋奉行」
本作の個人的ツボ作品そのに。
どの辺がお気に入りかとゆーと、それは本文冒頭の引用文を見て貰えればと思いますですハイ。
上記引用文で何とも思わなかった方はたぶん本書とは相性が合わないと思われます、大人しく違う本を読むのがよろしいかと。
まあ総括としてはですね、バカミス(バカSF?)がお好きな方は必読ですよ、ということでひとつ。
いやーすっげぇ面白かった!