小説感想 シリル・ヘアー「英国風の殺人」



英国風の殺人 世界探偵小説全集 (6)

英国風の殺人 世界探偵小説全集 (6)


「ウォーベック邸に神のご加護を!」クリスマスを言祝ぎ、シャンパンを飲み干した青年は、次の瞬間その場に倒れ伏した…。雪に降り込められたカントリー・ハウス、一族を集めたクリスマス・パーティの夜、事件は起った。病の床につく老貴族、ファシストの青年、左翼系の大蔵大臣、政治家の妻、伯爵令嬢、忠実な執事と野心家の娘、邸内には事件前から不穏な空気が流れていた。地域を襲った大雪のため、周囲から孤立した状況で、古文書の調査のため館に滞在していた歴史学者ボトウィンク博士は、この古典的英国風殺人事件に如何なる解決を見いだすか。「クリスティーの最上作を思わせる」傑作と呼び声高い、英国ミステリの伝統を継ぐ正統派シリル・ヘアーの代表作。



し、渋すぎる…。


時期は「クリスマス」、舞台が「貴族の館」、そしてシチュエーションは「吹雪の山荘」。まさにミステリファンにとっては夢の舞台!米英ミステリ黄金時代風味!(本書は1951年の作)
これだけでお腹一杯ですもう食べられません、という感じなのですが、こんなものはまだ序の口。


加えてベッタベタな登場人物(とりわけ執事)が出揃うと、もうゲップが出るほどの濃さ。
なんと言う愛すべき古典空間かっ!(もう大好き)


で、内容はとゆーと。
トリックらしいトリックはなく、捜査は主に動機の面からのアプローチで進み、結局そのまま解決してしまう為、本格原理主義者な方には不満が残るかもだ。


そーいった意味では本格ミステリを読む、という楽しみ方よりは探偵小説*1的アプローチの方が本書にとってはいいのかも。
秋の夜長に洋酒でも読みながら、格調高いっぽい雰囲気に浸りつつ読むとより楽しいかもだ?

*1:乱歩とか横溝とか、その手の小説は本格ミステリ、と呼ぶよりも探偵小説、と呼ぶ方がしっくりきません?