小説感想 日本探偵小説全集5「浜尾四郎集」
- 作者: 浜尾四郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1985/03/24
- メディア: 文庫
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検事から弁護士への道を歩んだ浜尾四郎は、その処女作「誰が殺したか」で正しかるべき法と、あるべき正義との矛盾を訴える。怜悧な理智と懐疑の目は、自らが会心の作とする「殺された天一坊」においても鋭い。他にも、短い作家生活の間に「悪魔の弟子」「死者の権利」「彼は誰を殺したか」など印象深い短編を多く残している。また真の探偵小説は理論的推理による真犯人の暴露でなければならない、との持論を実践したのが、長編『殺人鬼』である。様式こそ違え、堂々たる構築美を誇る本編は、『黒死館殺人事件』と並ぶ戦前の大建築といえよう。
思っていた以上に楽しめました。
収録短編は似たり寄ったりな感じがあり、大して印象に残らなかったんですけど……。「殺された天一坊」だけは別格。これだけ突出した異形の作品となっています。
大岡越前を主人公とする有名な「天一坊」のエピソードについての作品で、ある意味バカミスちっくでありながらも、読了すると異様に心に残る内容になっているのは見事としか言い様がありません。ストーリーの根本は他の収録短編と大して変わることないのに、シチュエーションを変えるだけでこーも印象が変わるとは…ッ!
で、長年読みたかった「殺人鬼」について。
戦前の作品だそーですけど、予想以上に読みやすかったですし、またミステリとしても十分面白かったです。
異様に長いのですが、読み手がダレそうになってくると事件が起る絶妙のテンポで、最後まで一気に読み通すことができました。古い作品にしてはリーダビリティが高いと感じましたよ。
フェアプレイに拘って作っているので犯人がバレバレであるとか、また探偵が知りえた情報が読者には公開されないのでフェアプレイに拘っている割にはちょいと片手落ちであるとか、まあ突っ込みどころは多々あるんですけど(;´Д`)
でも作品に漂う王道探偵小説雰囲気がステキすぎるので全て許す。
この大長編「殺人鬼」はヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」にインスパイアされて書かれたものだそーですけど、ぶっちゃけ本家の「グリーン家」よりも面白いよーな気が。まあそれは個人的な好みかな?読み比べてみると面白いかもだ。
…いや、ワシも「グリーン家殺人事件」は読んでますけど、もうだいぶ忘れてしまいましたので(;´Д`)
古典好きなら抑えておいて損はない作品。