小説感想 ランドル・ギャレット「魔術師が多すぎる」



※画像なし。ISBN表記が無いほどの古いポケミスです

ヨーロッパでは今世紀前半から、ジョン四世の英仏帝国とカシミール九世のポーランド王国が、緩衝地帯のゲルマン系王国をめぐって、険悪な関係にあった。英仏帝国海軍諜報部の二重スパイ、バルブールが何者かにナイフで刺し殺されるという血なまぐさい事件も最近起ったばかりだった。
その翌日、ロンドンのロイヤル・スチュワード・ホテルは薄いブルーの服をまとった魔術師たちでにぎわっていた。現代のヨーロッパでは、魔術師が社会のあらゆる分野に進出して、昔の科学者や弁護士にかわる重要な役割を果している。その魔術師たちの三年に一度の大会がいま盛大に開かれようとしているのだ。実に奇妙な殺人事件が起きたのはその昼前であった。二回の主任法廷魔術師マスター・ジェームズの部屋で悲鳴が起り、ついで重いものが倒れる音がした。数分後、斧で打ち破られたドアから部屋に入った人々によって、すでに絶命しているジェームズの死体が発見された。2インチの厚さのドアは内側から鍵がかけられたうえに本人にしか開けられぬ呪文で封じてあり、錠の降りた窓に面した中庭では、数人の魔術師が閑談していた。この密室殺人の犯人としてロンドン侯爵は被害者のライバル、魔術師シーンを逮捕したが、主任捜査官ダージー卿はこの処置に疑惑をはさんだのである!
SFと本格推理小説を組み合わせた傑作長編!



ひょっとしてひょっとしなくてもレア本ですかコレ。


所持しているのがポケミス版(昭和46年)だからか、文庫版「魔術師を探せ!」に比べ一部人物の名前表記が異なってますな。(文庫ではワトソン役はマスター・ショーンと明記されていましたが、ポケミス版ではマスター・シーンとなっています)


まあそんなことはどーでもいいか。ではネタバレしないように気をつけて感想を。


えーと、面白いけど過剰な期待は禁物、って感じかな?


とはいえ、「魔術師を探せ!」が楽しめた人ならば文句なしに楽しめる作品かと。ミステリ度は「魔術師を探せ!」よりも高いし。(ガチの密室ものですしね)


恐らく読了した人間がこの作品の密室トリックについて何がしか語りたくなるものと思われます。このトリックについては賛否両論あるでしょうね。だって・・・。(ネタバレになるので自主規制)


ワシは「あ、そーゆー処理できましたか」という風にスンナリ受け入れられましたけど。一応伏線はフェアに張っているので、そんなにケチつけるほどではないかな?


あと、密室トリックだけに目を向けるとこの作品の面白さをちょいと見落とすかも知れません。「魔術師が多すぎる」の良いところはプロットの妙にもあると思います。諜報部による国家間の情報戦とかダーシー卿とロンドン侯爵の頭脳戦とか、密室に頼り切った構成になっていないのは見事。まったく、よく訓練されたエンタテインメント作品だぜ!


十分面白かったですけど、問題は入手が困難、ということか…ッ!
状態がちょいと悪いので、復刊されれば買いなおしたいゆえハヤカワ様よろしくお願いします。