小説感想 有栖川有栖「モロッコ水晶の謎」



モロッコ水晶の謎

モロッコ水晶の謎


推理作家・有栖川有栖の眼前で起きた毒殺事件に、臨床犯罪学者・火村英生が超絶論理で挑む表題作ほか、クリスティの名作「ABC殺人事件」をモチーフに書かれた、連続挑戦予告事件を追う「ABCキラー」、誘拐殺人の陰に潜む悲劇を描く「助教授の身代金」など、研ぎ澄まされた論理が光る有栖川本格全4編を収録。



いつもどおりの超安定内容。


表題作「モロッコ水晶の謎」が割とツボをつく内容でしたので、これまでに出た短編集よりも楽しめたかなー、という感じです。論理の凄みってよりは…なんつーか狂人の論理とでも言えばいいのか。過去にありそうな論理ですが、恐らくこの手の応用ではあまり例がないんじゃないのかぁ。「毒殺」というミステリ界隈では手垢のついた素材を扱っていながらも、ちょっとアレンジを加えただけで異形の作品に仕上がっています、見事。


収録作のどれもが標準以上の安定作ですが、逆にこれといった特徴もないので嫌いな人は嫌いでしょーね。でも万人に愛される内容ではあると思いますので、捻くれたミステリ愛好者でない限り楽しめると思います。たぶん。