小説感想 アンソロジー「あなたが名探偵」
<ミステリーズ!>人気企画が待望の単行本化。泡坂妻夫、西澤保彦、小林泰三、麻耶雄嵩、法月綸太郎、芦辺拓、霞流一、七名の人気作家がおくる難問を、あなたは解けますか。
収録作の半分以上は楽しめましたので、まあ割と好短編集ではないかと。でも本編と解決篇は別ページにしなくてもなぁ…。読みにくいったらありゃしない。
今回改めて気づいたのが、どーもワシは泡坂妻夫と相性悪いみたい。(以前読んだ奇術探偵のシリーズもイマイチ肌に合わなかったし) 何でなんだろーな…。まあそれはそれとしてですね、短編集ですので例によってミニコメを。
泡坂妻夫「蚊取湖殺人事件」
氷上で見つかった死体の首には、包帯が巻きつけられていた…。
トリック自体はそれなりなんですが、そこに持っていく展開…っつーかなんと言えばいいのか。作品の雰囲気?兎に角みょーに古臭く、自分的にはイマイチでした。
西澤保彦「お弁当ぐるぐる」
白昼に失職中の夫が殺された。彼の弁当を食べたのは誰か…。
登場人物が皆濃すぎ。短編なのになんですかこのキャラ立ちは。しかも内容にまったく関係ないし(;´Д`) どーでもいいですが脱力ダイイング・メッセージは個人的に好きだったり。
小林泰三「大きな森の小さな密室」
高利貸の男は誰に殺されたか。密室に入れたのは果たして…。
んー、なんつーか本格プロパーな方ではないので仕方ないと言えば仕方ないのかも知れませんけど。何だか舞台の台本ちっくな内容でこれも個人的にはイマイチでした。
麻耶雄嵩「ヘリオスの神像」
荒らされた部屋、壊された神像。何者かが被害者を殺害できたか…。
「神様ゲーム」で邪悪さを出し切ったからかは分かりませんが、そんなに邪悪さを感じなかった短編でした。(いや、微妙に邪悪要素は持ち合わせていますが…) 消去法による推理がエレガント。
法月綸太郎「ゼウスの息子たち」
客室で殺害された恐喝者。残されたダイイングメッセージは…。
本短編集でベストクラスのクオリティ。さすが法月綸太郎、という感じでした。タイトルにも使われている「ゼウスの息子たち」が作品内で効果的なモチーフとして使われているのと同時に、ミスディレクションとしても使われているのがナイス。
芦辺拓「読者よ欺かせておくれ」
ペンシオンでの殺人。その夜現れた鉄仮面を被った女性は…。
冒頭からこれでもか、と「この作品はフェアですよ」と謳っていたので一体何を仕掛けたものやら、と思っていたら…。案の定やりやがってくれましたよコンチキショウ。反則スレスレですが、まあコレはコレでよし。ある意味、本短編集の裏ベストとも言えよう(?)
霞流一「左手でバーベキュー」
高原の別荘で殺された男性、消えたガラス細工との関連は…。
ちょっと苦しいトリックのよーな気がしないでもないですが(;´Д`) 作品中で繰り出される紅門のちょっとした出来心に免じて全部オーライ、ということでひとつ。しっかし、相変わらずシュールな事件現場だよなぁ…。