小説感想 北野勇作「空獏」



空獏 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

空獏 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)


昔々のこと。世界が古くなったので、えらい人たちは獏を創って、新しい世界を夢見てもらうことにしました。みんなは安心して獏のなかで眠りにつきました。でも、やがて獏は不安に囚われてしまったのです。自分のなかの人たちは実は死んでいるのではないか、と……まあ、そんなこんなで私は、戦いつづけているわけだ。商店街で敵を待ち伏せしたり、ヒト型戦闘機械に乗り込んだり、西瓜太郎の指揮で悪の王国に奇襲をかけたり。でも肝心の私とは誰か、まったく思いだせないのだけれどね、あの夕陽のきれいな街の風景以外は───9つの短編と10の掌編が織りなす、不条理で情けなく、けれどヒトに優しい戦争の話。



これはもう、作者後書きにあるよーに「ひたすらかっこわるくてセコくてアホらしい戦争の話」としか言い様がありませんです(;´Д`) しかも「どーなつ」で感じたノスタルジーちっくな奇妙さは健在、というのがまた凄いな。


ホントもう、しょーもない戦争の話ばっかりなのですが…。作風がそう感じさせるのか、憎むことなく猛ることなく失望することなく、そして優しい内容ばっかりの収録作ばかりだったと思います。(まあでもビジュアル化するとすげーシュールな世界だけどねっ!)


ワシとしては、収録短編よりも掌編の方が心に残るものがありました。「怖い西瓜畑の話」がちょっぴり怪奇風味でステキに愉快。


んー、でもオススメかっつーとちょっと困るかも(;´Д`)
北野作品未読の方は、ワシ同様「どーなつ」あたりから入るのがいいかもだ。(ファンの方には迷うことなく買うがよかろーて)