小説感想 新城カズマ「サマー/タイム/トラベラー」全2巻



サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)



サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)


あの奇妙な夏、未来に見放されたぼくらの町・辺里で、幼馴染みの悠有は初めて時空を跳んだ───たった3秒だけ未来へ。<お山>のお嬢様学校に幽閉された響子の号令一下、コージンと涼とぼく、そして悠有の高校生5人組は、<時空間跳躍少女開発プロジェクト>を開始した。無数の時間SFを分析し、県道での跳躍実験に夢中になったあの夏───けれど、それが悠有と過ごす最後の夏になろうとは、ぼくには知るよしもなかった。



若いって素晴らしい。


文章がやたら後ろ向き(「〜だったんだ」「このときは気づいていなかった」だの)なので、ちょっと取っ付きにくい感じはしますが…。それを乗り切ることができるかどーかがこの作品の一番のヤマのよーな気がします。内容は良質なSFかつ青春小説なので、「文章についていけねぇ」と断念せず読み通して欲しいところ。


まあこの文章も内容からすれば順当なモノかなぁ。登場人物の少年少女の若さゆえの過ちっつーか青春のイタイタしさっつーか、とにかく内容がそんな感じ全開なので。読了すれば割と好感触になると思うんだけど。

ただ単に、ひとりの女の子が───文字どおり───時の彼方へ駆けてった。そしてぼくらは彼女を見送った。つまるところ、それだけの話だ。



1巻冒頭からの引用。
結局最初から最後まで、読み通してみればほんとそれだけの話でした。でも───だからこそ、ラストシーンがとても美しく、そして切ない。個人的にかなり気に入った作品です。