小説感想 米澤穂信「クドリャフカの順番」



クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件


待望の文化祭が始まった。何事にも積極的に関わらず<省エネ>をモットーとする折木奉太郎は呑気に参加する予定だったが、彼が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。十文字と名乗る犯人が盗んだものは、碁石、タロットカード、水鉄砲───。この事件を解決して古典部知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!千載一遇のチャンスを前に盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は「十文字」事件の謎に挑むはめに!



青春、青春って何だ、ちょっとホロ苦いものさ。


はっきり言って、上記あらすじは本書の魅力の十分の一も伝えられていないよーな。
確かにミステリとしては上記の内容を扱っていますけど、それよりも本書は登場人物の心理描写について着目すべきだと思うけどなぁ。(この部分が良く出来てるんですよ、これが)


氷菓」「愚者のエンドロール」に続くシリーズ3作目になる本書。既刊では語り手は奉太郎が基本であったのに対し、本書は古典部の面々による4人が語り手となって構成されています。語り手が複数になっておりますので、事件に対する古典部の面々の心理状態が描写されることになったのですが…。


結果として、これが大正解。古典部員・福部里志のパートがすっごく良いです。奉太郎に変わり事件を解決してやろうと意気込む彼が、捜査の果てに呟く

データベースは結論を出せないのさ。



の一言にとっても痺れました。この一言に至るまでの彼の思考プロセスが描写されているので、すげー胸を打ちます。


あとラストの犯人の独白のくだりとかも、遠く昔に失った何かを思い出させてくれやがりまして、ちょっと胸が痛くなったりも。(言いたいことが理解できるのが、また辛いんだよなぁ)


いや、実にナイスな学園青春ミステリでした。「氷菓」「愚者のエンドロール」とは比較できないくらいにクオリティがUPしているゆえ、これらの作品が肌に合わなかった方も是非。