小説感想 ジェフリー・ディーヴァー「獣たちの庭園」



獣たちの庭園 (文春文庫)

獣たちの庭園 (文春文庫)


1936年、オリンピック開催に沸くベルリン。アメリカ選手団に混じって、ナチス高官暗殺の使命を帯びた一人の殺し屋がニューヨークから潜入するが、現地工作員と落ち合う際に誤って人を殺し、警察に追われる身となる。暗殺を果たし、無事に国外逃亡できるか……。「どんでん返し職人」ディーヴァーが初めて挑んだ歴史サスペンス。



良作の冒険小説。


一連の「リンカーン・ライムシリーズ」*1とは違い、本書は冒険小説風味のミステリです。


ニューヨークの殺し屋・ポール、ドイツの警察官・コール、ナチスの高官・エルンストの3人の視点を軸に、史実を虚構を織り交ぜてナチス政権下のドイツ国内の状況を濃密に描写。海外の状況に疎いワシは、虚と実の区別が付かないのでディーヴァーの掌の上でいいよーに踊らされましたよ(;´Д`)


そんな冒険小説風味な内容であるにも関わらず、さすがディーヴァー。きっちりと「どんでん返し」を決めてくるあたり、職人の意地といいますか読者サービスにも程があるといいますか。終盤のジェットコースター展開は手に汗握るドキドキものですよ!もうどんでん返しにつぐどんでん返し。


というわけで、個人的には大いに楽しめました。安心してオススメできる冒険小説だと思います。(「魔術師」のよーなガチなミステリの内容ではありませんゆえ、ファンの方はその辺をご留意をば)

*1:シリーズ5作目の「魔術師」は大傑作です