小説感想 ヘンリ・セシル「メルトン先生の犯罪学演習」



メルトン先生の犯罪学演習 (創元推理文庫 145-1)

メルトン先生の犯罪学演習 (創元推理文庫 145-1)


法理論とローマ法の世界的権威メルトン教授は、母校ケンブリッジ大学に迎えられて講義を始めることになった。ところが、その朝すべって頭に変調をきたした先生は、開口一番、学生たちに向かって、おもしろい話をしゃべり出した。内容は、いずれも、いかにして法網をくぐって悪事を働くか、という突拍子もないことばかり。たちまちその評判が伝わって、堅苦しい法学教室は学生の群で超満員!はては学校当局から、同僚の教授たちまで聴講にくるという騒ぎになったが……。



ユーモア溢れる愉快極まりない法廷(?)ミステリ。


本好きの方ならば、稀に出くわすと思うんですが「俺を買え!」と訴えかけてくる本ってのがありますよね?評判っつーかその本の存在すら知らなかったとゆーのに、見つけた瞬間から妙に気になってしまって結局買ってしまうとゆー本のコトです。


本書「メルトン先生の犯罪学演習」はワシにとってまさにそんな本。ヘンリ・セシル*1の名前さえ知らなかった時分、古本屋の棚で埃まみれで埋まっていた本書を偶然見つけたところ、ビビビッとハートに来る物がありまして思わず査収してしまったのですが(;´Д`) いやもう、これが大いに傑作で大いに満足ですよ。つーか粗筋からして面白いっつーかちょっと笑ってしまうと思うんですけれどもどーなのよ。


と、前置きが少々長くなりましたが、内容は短篇が幾つも集まった長編形式(連作…というわけじゃないです)。その全てが法の裏をかくよーなアウトロー話なのですが、作品に漂うユーモア要素が強いためあまり凄惨な感じはせず、むしろ爽やかな感じすら受けました。収録作全てが面白く、かつ割と意外性がある話なので熟練のミステリ読みから初心者の方まで、広く進められる傑作ではないかと思います。


つーかですね、上記粗筋はストーリー序盤でして。この後メルトン先生は多くの修羅場を潜り抜けることになり、それがまた愉快なんですよヽ(´ー`)ノ そして計算し尽くされたラストのオチ、これがベタですが素敵すぎです。思わず爆笑してしまうこと請け合い。


ちと入手が難しいとは思われますが、これは古典好きには是非とも読んで欲しい作品。オススメですっ!

*1:最近、論創海外ミステリで本が出ましたので名前ぐらいは知ってる、という人が増えたはず