小説感想 山田風太郎「明治バベルの塔 万朝報暗号戦」




───クサタヤイケハノサカアカ───
これは某大臣の『醜聞探し』なり。
それを説けば某大臣の醜聞、照魔境のごとく現る。
さればこのたびは、懸賞金は特に一千円とす。
請う、百万の読者ことごとく参加せられよ!(本文より)
明治の大新聞、万朝報が仕掛けた暗号の中身とは………。
表題作ほか、珠玉の明治物三篇。



バカありシリアスありのナイス短篇集。


わはは。ちょっと不謹慎な気がしないでもない作品集ですけれども、かなり楽しく読めましたよん。つーか山風ってこんな作品も書いていたんだ…。やっぱスゲェ作家だなぁ。


「明治バベルの塔」「牢屋の坊ちゃん」「いろは大王の火葬場」「四分割秋水伝」の四編から成る短編集(連作ではありません)なので、久しぶりにそれぞれ簡単にミニコメをば。


「明治バベルの塔


マニアックな暗号小説なんですけれども、その暗号を逆手にとってねじ上げた展開がステキ。作中の黒岩涙香の扱いが少々不謹慎ではないのかと思われるのですけれども、これは既に歴史上の人物だから好きに扱ってやれってことなんですか(;´Д`)


「牢屋の坊ちゃん」


何と漱石パロディ。


ひょっとして坊ちゃんパロ?と気づいた瞬間爆笑ですよ。いやーこんなものも書けるんだなぁ山風。すげぇ。


「いろは大王の火葬場」


冒頭からしてオチが予想されるんですが(;´Д`) スラップスティックな味わいが光る逸品でした。


「四分割秋水伝」


これだけシリアスな作品。他のがお馬鹿なだけあって、一際異彩を放っております。面白いかどーかと問われればびみょーな所だったんですが(;´Д`) まあこれはこれで。






いじょ、かなり楽しめた作品集でした。山風の明治ものはちくま文庫に全て収録されていたと記憶していますので、興味のある方はそちらを当たってみては如何でしょうか?