小説感想 アントニイ・バークリー「ウィッチフォード毒殺事件」



ウィッチフォード毒殺事件 (晶文社ミステリ)

ウィッチフォード毒殺事件 (晶文社ミステリ)


ロンドン近郊の町ウィッチフォードで発生した毒殺事件に興味をもったシェリンガムは、早速現地へ乗り込んだ。事件はフランス出身のベントリー夫人が、実業家の夫を砒素で毒殺した容疑で告発されたもので、状況証拠は圧倒的、有罪は間違いないとのことだったが、これに疑問を感じたシェリンガムは、友人アレック、お転婆娘のシーラと共にアマチュア探偵団を結成して捜査に着手する。物的証拠よりも心理的なものに重きを置いた「心理的探偵小説」を目指すことを宣言した、巨匠バークリーの記念すべき第2作。



「心理」もいいけど「証拠」もねっ!


1926年の作品なので古典と呼ぶに何ら躊躇いはないのですが、プロットそのものは近代の新本格でも十分通用するといっても良い、それくらいの新しさ。………っつーのはちょいと誉めすぎ?


しかし「毒殺」っつーテーマにおいてこれだけの意外性を醸し出せる、この技巧は「お美事!お美事にござりまする!」としか言いよーがないと思います、正直このオチはちょっと読めませんでした(;´Д`)


心理的探偵小説」を目指したっつーことですが、終わってみれば証拠に基づいた古式ゆかしい探偵小説的大団円を迎えているのは、バークリー特有のユーモアなのかにゃ。(皮肉が利いていると言えば利いているけど…)


ともあれ、古典ファンにはモーレツに推奨したいところ。バークリー未読の人は入手しやすい「毒入りチョコレート事件」からお試しあれっ。