小説感想 山田正紀「マヂック･オペラ」

マヂック・オペラ --二・二六殺人事件 (ハヤカワ・ミステリワールド)

二･二六事件前夜。置屋の密室で芸者が刺殺された。詳細は「"乃木坂芸者殺人事件"防備禄」と縊死した囚人の手による「感想禄」に綴られていた。"検閲図書館"黙忌一郎の依頼で調査を始めた特高警察の警部補が遭遇する奇怪な出来事･･･。黙が追い続けたドッペルゲンガーとは？昭和維新の影に潜む恐るべき陰謀とは？『ミステリ･オペラ』に続き、昭和史を探偵小説で描く＜オペラ三部作＞の第二弾！

や、山田正紀は化け物かっ！


シリーズ前作『ミステリ･オペラ』は本格ガジェットを「これでもかっ！これでもかっ！」とばかりに詰め込んだ、言わばごった煮感溢れるミステリでした。で、続編である本作なんですけれども･････････正直『ミステリ･オペラ』よりも小粒な感じがしないでもないのですが、前作よりもかなり洗練された内容になっておりますので密度的には本作の方が濃い気がするとですよ。


つーかワシとしては前作よりもこちらの方が好きっす。虚と実の織り交ぜ方もかなり巧くなってるし、何より「二･二六事件」をミステリとして扱ったストーリーが実に面白い。ワシは脳が足りないカワイソウな人なので、「二･二六事件の真相はこれだったのかーッ！」と思わず信じそうになってしまいましたよ。(おいおい)


細部に至る小道具までステキな、実に濃厚なミステリです。『ミステリ･オペラ』読了者はもちろん必読、別に本作から入っても問題ない内容ですの前作未読の方もどぞ。






つーか正直、本年度ベストクラスのミステリですよこれ？「本格ベスト」ではどーだかわからんけど、少なくても「このミス」では上位狙えると思うのですよ、ええ。本年度はこのまま何事もなく推移すれば、三津田信三「厭魅の如き憑くもの」と山田正紀「マヂック･オペラ」で決まりと思うがどうかっ？