小説感想 ロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」



エンジェル家の殺人 (創元推理文庫)

エンジェル家の殺人 (創元推理文庫)


エンジェル家は、まるで牢獄のような陰気な外観をもつ家だった。しかも内部は対角線を引いたように二分され、年老いた双子の兄弟が、それぞれの家族を率いて暮らしていた。彼らを支配しているのは長生きしたほうに全財産を相続させるという、いまななき父の遺言だった。そして、死期の近いことを感じた双子の兄が、遺言の中身を変更することを弟に迫ったときから、すべての悲劇ははじまる。愛憎うず巻く二つの家族の間に起こる連続殺人事件を、たくみなストーリー展開と、もりあがるサスペンスによって描いた密室ものの古典的名作。完訳決定版!



素晴らしいっ!


江戸川乱歩が惚れ込み、「三角館の恐怖」とゆー作品に翻案したとゆー逸話を持つ本書。あと確か有栖川有栖が著書「有栖川有栖の密室大図鑑」(だったかな?タイトル失念、ごめんなさい)でも紹介していたはず。そんなわけでマイナーのよーで微妙にメジャーな気がしないでもない本書ですが、いやもう期待を裏切らない面白さでしたよ。


そもそも扱っているのが「エレベーター密室殺人」とゆーのが素敵極まりないのですけれども、本書の魅力はそこだけに非ず。プロットの妙技とでも言えばいいのか、終盤に向けてのサスペンスっぷりが半端ではありません。そして沸点が頂点に達した際に始まる解決編、ああもうパーフェクトすぎるぜスカーレット!ぐっじょぶっ!


「探偵が非人道的すぎない?」とか「密室トリックがちょいとびみょー」とか思われる方もいらっしゃるでしょーけど、その辺含めてワシは全て許容するものなり。つーか細かい点には眼を瞑り、本書の雰囲気を楽しみましょーよ(;´Д`)


1932年の海外本格黄金時代の作品で、しかも作中には屋敷の見取り図がやたらと登場する実に本格好きに優しい内容なので海外本格好きは要チェックだっ!(絶版なのが悔やまれるなぁ・・・ orz)