小説感想 ジョージ・R・R・マーティン「フィーヴァードリーム」(上下巻)



フィーヴァードリーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

フィーヴァードリーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)


ジョシュア・ヨークとは何者だ?舵を握りながら、船長のアブナーは考えていた。事故で持ち船を失った自分に共同経営の話をもちかけ、莫大な資金を出してこの壮麗な蒸気船フィーヴァードリーム号を建造させた。ミシシッピ川での船旅がしたい、と言う。そのくせ昼間は船室に閉じこもりっきり、姿を見せるのは夜だけときた。何が目的なんだ、あいつ。若いのか老けているのか、どこの国の出かも定かでない。穏やかそうな細面に女のような手。だが、あの眼は、とてつもなく・・・・・・・・・アブナーはまだ知らなかった。ジョシュアは闇に棲まう者、仲間の吸血鬼を率いた血の支配者であることを!



フィーヴァードリーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)

フィーヴァードリーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)


ジョシュアの目的はただひとつ。吸血鬼一族を呪われた血の渇きから解放し、人間と共存する途を見出すこと。蒸気船を造らせたのも、ミシシッピ川沿岸に散った同胞を集めるためだ。しかし、いまひとりの血の支配者、邪悪の化身にして一族の王たらんダモン・ジュリアンが、配下を引き連れフィーヴァードリーム号に迫りつつあった。笑止、しょせん人間どもは我らが餌・・・・・・・・・はたして吸血鬼一族は、どちらを救世主として仰ぐのか。吸血鬼同士の、そして吸血鬼と人間との壮絶な闘いと友情を描いて、新しい古典と呼ばれるにふさわしい渾身の傑作!



マーティンすげぇ!


ホラーなのか冒険小説なのか微妙なジャンルの作品ではありますが、いやもう何ですかこの「男の世界」っぷりは。昔のジャンプ読者なので思わず「友情・努力・勝利」の3大キーワードを即座に連想してしまったワシもどーかしてると思うのですが、とにかく作品の濃度は測定不能、そりゃもうスカウターも壊れてしまうってものですよ。(わかったから落ち着け)


もうですね、とにかく人であるアブナーと人外であるジョシュアの友情っぷりが泣けます。最初はいがみ合い、わかりあい、そして協力に至るプロセスはベタと言えばベタですがとっても良いですな。そして特にラスト近辺の二人のやり取り、アブナーのジョシュアに対する一言があまりにもステキすぎてまた号泣。(涙腺弱いねキミ)


またエンターテインメント作品でありながら、奴隷制度がまかり通っていた時代のアメリカの風俗についての歴史小説としても一級品の内容であるという贅沢な作品でもあります。楽しく読書しながら、アメリカの歴史について学べるとゆーこの親切仕様!さあどーよ。(いや、どーよと言われても)


・・・とはいえ、派手なアクションものと思って読むと肩透かしを喰うこと必至なのですが(;´Д`) 派手さはないけれども、がっしり重厚な内容なのできっと読了後の充足感は高いはず。ミステリファン、及びSFファンどちらにもオススメできる内容なので是非一読をばっ!