小説感想 竹本健治「ウロボロスの純正音律」



ウロボロスの純正音律

ウロボロスの純正音律


長編マンガの描き下ろしの依頼を受けた竹本は、<玲瓏館>の一室を借りて作業を開始した。怪しげな使用人たち。アシスタント陣。そして館に集まった錚々たるミステリ作家・評論家・編集者たちの面前で、突然『モルグ街の殺人』見立ての殺人事件発生!一同は早速推理合戦を開始するが、真相に辿り着けないまま、第二の見立て殺人が起こってしまう。彼らは果たして犯人をつきとめ、新たな凶行を阻止できるのか?
───重層する暗号。舞い踊るペダントリー。ミステリファン待望の「ウロボロス」シリーズ完結篇。八年の制作期間を経て、ついに堂々完成!



うむ、期待通りのバカミス


偽書」「基礎論」と続いた、ウロボロスシリーズの完結篇。「偽書」のメタメタっぷり、「基礎論」の予想外のオチ(そんなオチでいいのん?と当時は意味もなくヒヤヒヤしたものですよ)がとっても好きですので本書にも多大な期待を寄せていたのですが、いやこれが予想以上の内容でワシもう大満足。想定していたハードルを軽々と越えていきやがってくれました、実に素晴らしきバカミスでしたぜ。


「一体何処をどう突っつけばこんな考えに至るのか・・・!完全にイカレているぜ!」といったストーリーはもちろん、竹本氏お得意の囲碁に関するペダントリー、モチーフである「黒死館殺人事件」を見事に生かした構成、実名で登場する作家による推理合戦、京極先生ちょっと活躍しすぎじゃね?でも扱いちょっと酷くね?というツッコミどころ、その他読みどころが沢山ありました故、長さの割にはさっくり読めてしまいました。・・・しかしこれだけの長編のオチが(自主規制)とは、誰も思いつかねーだろマジに。いや、思いついても止めるよな、良心回路が正常動作しているならば。ぬぅ、竹本健治・・・出来ておる・・・!


制作期間が長かった為、ちょいとネタが古い部分もありますがまあそれは許容範囲でしょ。つーかその辺はむしろ味があるわいな。シリーズファンならば納得の内容ですのでファンの方は安心して読むがよかろう。そしてオチで脱力するがよかろーて。「さすがウロボロスシリーズ」と無理に自分を納得させるがよかろーて(;´Д`)


・・・いや、ワシはほんと大満足ですよ本書?ワシとしてはすげぇお勧めしたいんですが、まあ広く受け入れられる内容ではないと思うからなぁ。(ちなみに「偽書」「基礎論」との繋がりはまったくありませんので、本書のみで十分楽しめるっちゃー楽しめますが・・・)