小説感想 マーク・マクシェーン「雨の午後の降霊会」



雨の午後の降霊会 (創元推理文庫)

雨の午後の降霊会 (創元推理文庫)


ロンドン郊外に居をかまえる霊媒マイラが立てた犯罪計画は、奇妙なものだった。金持ちの子どもを誘拐し、みずからの霊視で発見に導けば、評判が評判を呼び、彼女は一流の霊媒と認められる・・・。そして、実業家クレイトンのひとり娘アドリアーナを誘拐。夫ビルに身代金を要求させるいっぽう、マイラはクレイトン家を訪ね、娘について霊視したことを伝える。すべては計画どおりに進んでいた。ビードルという地元の警察官が、にこやかな笑みを浮かべて現れなければ・・・。
緊密な構成と、繊細な描写が誘う、最後の7ページの衝撃と深い余韻。ミステリ史上唯一無二、驚愕の傑作サスペンス。



・・・え、えっと、バカミス(恐る恐ると)


・・・い、いやちょっと待って!ほんとちょっと待って!今説明するから!


えーと、まあ確かに最初は「おおぅ、久々にぞわりと来た作品だったなぁ」と思っていたんですよ。オチのインパクト、それによって得られる余韻、これだけで十分に楽しめたと言えまして十分に満足したんですが。


ところがしばらくしてくると、じわりじわりとボディーブローのよーに「ひょっとしてこの展開、割りとおバカじゃね?つーかバカミス的オチじゃね?」と思えてきたんですよ。解説の小山氏は本書を「本書の筆致はブラックユーモアの域にまで昇華されている」と評しておりますが、さもあらん。メインを張るビル&マイラ夫婦の犯罪計画がベッタベタな展開で破綻していく様は、おバカと言わずして一体なんだとゆーのか。明らかに計画が破綻しつつあるってーのに「だいじょうぶだいじょうぶ、へいきへいき」とやたら前向きなマイラの行動っぷりに対し、「いやいや、もう無理」と突っ込みを入れずにいられるかってゆーのか。


つーわけでワシ的にはバカミスっつーことでひとつ。オチについても語りたいところですが、それを言ってしまうと本書の楽しみがまったくもって失われてしまうため、それは興味をもった人が読んで確かめてくださいってことでお願いいたしやす。


普通に・・・っつーかかなり上質のサスペンス作品ですので、ワシのよーな歪んだ楽しみ方をせずとも十分に楽しめるものと思います。薄いのでさっくり読めるってーのもいい感じ。・・・あー、あれだ、「世にも奇妙な物語」とかが好きな人は多分好きになれると思うなぁ。