小説感想 ミルドワード・ケネディ「救いの死」



救いの死 (世界探偵小説全集)

救いの死 (世界探偵小説全集)


グレイハースト村の名士エイマー氏はある日、他人を寄せつけない謎の隣人モートンが、かつて華麗なアクロバットで名を馳せた映画俳優ボウ・ピーヴァーによく似ていることに気がついた。十数年前、人気絶頂のピーヴァーが突然引退した謎に興味をかきたれられたエイマー氏は、金と暇にあかせて探偵のまねごとを思いつき、独自に調査を始める。過去の記録を探るうちに、やがて女性秘書の襲撃事件や、役者修行時代に関わった殺人事件裁判が浮上し、俳優の秘められた過去が次第に明らかになっていくが・・・。30年代英国ミステリ界きっての異才が盟友アントニイ・バークリーに捧げた問題作。



うは、邪悪だ。



   /::://:::! /-=、 ,// u / _,,.-ゝ. 「ヽ l    ! , l バークリーに宛てた冒頭の文章、
  /::_;イ-‐=レ'==ミ"   '∠-==ヽl=ヽlヽ  レ'レV
/::::::::..、   o   ,≡:::::::〈、  o   ,  :|│ リ '  目次から読み取れる全体の構成……
::::::::::::::::: ` ー--‐ '´三 :::::::::ヽ`::ー-‐:'.´   |│ l
:::::::::::::::    ニニ  ::::::::::::::ヽ::::::::: U  |│ !   この二つの符号が意味するものは
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探偵役のエイマー氏がいい感じにアレな人で、バークリーのシェリンガムもあわやとゆー感じの妄想推理を繰り広げやがってくれますので「どーせアレだろ?(自主規制)っつーオチなんだろ?」と思い込んで読んでたら、いい感じに背負い投げを食らわされてしまいましたよ。この展開でこのオチか、邪悪だなぁケネディ。(グッ!と親指を立てつつ)


内容のほとんどがエイマー氏の手記で構成されているんですが、その手記の端々から読み取れる氏の愉快なキャラクターがバカミス愛好家である当方のハートに響きましたので、展開・トリック・読後感・その他全てを許してしまったワシなのです。いやもうこれはよい狂人。ミステリとしてはちょいと強引なところ(特に最後のツメとか)が感じられないこともないですが、まぁガチの本格じゃぁないミステリなのでこれはこれで十分にありかな。面白ければそれでいいやね。


中々の異色作、捻ったミステリが読みたい人はどぞ。(でも近年じゃぁそんなに珍しいオチでもないかな?)