小説感想 古野まほろ「天帝のつかわせる御矢」



天帝のつかわせる御矢 (講談社ノベルス)

天帝のつかわせる御矢 (講談社ノベルス)


戦下の大陸を逃れ東京へ向かう超豪華寝台列車、環大東亜特別急行あじあ』。乗客16名のなかに世界的間諜『使者』の存在もあるという。荘厳かつ絢爛を極めた客室で公爵夫人のバラバラ死体が!当該列車に乗車していた頸草館高校3年古野まほろと柏木照穂の推理は?



メフィスト賞「天帝のはしたなき果実」で恐るべきバカミスっぷりを発揮した、古野まほろ氏の新作でございます。「はしたなき果実」の続編とゆー扱いになっており、「前作を読んでない奴ぁついてこなくてもいーぜ!」とゆー何とも漢らしい仕様になっているところに痺る憧れるってもんでさぁ、ええ。(棒読み口調で)


つーか前作のオチを体験してしまったこの身としては、「いったい今回はどんなネタでワシを彼岸の彼方へと飛ばしてくれるんだろう?わくわくどきどき」と期待十分で読み進めたんですが・・・。ですが・・・ッ!えーと、その、なんだ。割とフツーじゃんよ。みなさまの「これがフツーなのかよ」とのツッコミは甘んじて受けないものとします。(受けないのかよ!)


もちろん独特(とゆー他に表現の仕様がない)の文体やら、あまり効果的に作用しているとは思えない衒学趣味やら、とってもとってもクセが強い内容なんですけれども・・・骨格部分は王道と言っても差し支えのない本格ミステリだなぁ、とゆーのがワシの正直な気持ち。解決編のボリュームにゃぁNOBさんゲップが出るほど満足ですよ。(全体的に無駄に長い気がしないこともないですけど・・・)


そして今回もオチに一応大ネタ(?)を仕込んでいるんですが、これを「待ってました!」と受け取るか「うは、もうお腹一杯っす」と受け取るかで読後の充足度がかなり変わってくるんではないかなと。上等の料理にハチミツをぶちまけるが如きのネタですが、まぁ本書を読もうっつー人はきっと「はしたなき果実」を受け入れられた人だけに違いないので特に問題ねーか。みなさまきっと生暖かい笑みをもって受け入れるに違いなかろーて。たぶん。きっと。


前作よりバカミス度は低下していますが、その分本格ミステリ度がUPしている本書。しかし本書を読むためには前作「天帝のはしたなき果実」を読んでおく必要があるとゆー罠。まぁ興味を持たれた方は前作「はしたなき果実」を試してみては如何?