小説感想 松尾詩朗「撲殺島への懐古(ノスタルジア)」



撲殺島への懐古 (南雲堂SSKノベルス)

撲殺島への懐古 (南雲堂SSKノベルス)


空手、レスリング、柔道、キックボクシング、中国拳法、各々違う格闘技の道を究めることを志していたが、彼らは気が合い、いつも一緒の仲間だった。大学卒業を前に合宿をかねて瀬戸内海の孤島へ二泊三日の旅行に出かけた。待ち構える孤島、異形の館で起こる密室殺人!そして事件は思いがけない展開へ!!



うむ、ど真ん中ストレートのバカミス


「撲殺島への懐古」という怪しげなタイトル、帯の「推薦!!襲いくる、科学の肉食獣!! 島田荘司」という御大の推薦文、作者の過去の経歴(御手洗パロディなど)などなど、もう読む前からバカミス臭がとめどなく溢れてきてワシもう辛抱たまらん!という状態だったのですけれども・・・。その期待はまったくもって裏切られることはありませんでしたとさ。つーか期待以上でしたともさ、ええ。


まずもって冒頭のプロローグ、殺人に至るプロセスからしてイイ笑顔を浮かべてしまうんですけれども、本編入ってからいきなりフルスロットル。メインの4人組の紹介が始まったかと思えば、いきなり船上で大ゲンカ開始。お前ら気が合う仲間じゃなかったのかよ!という突っ込みも何のその、そのあとも「頭が悪いとはこーゆーことだ!」と言わんばかりの行動っぷりで、もう、なんつーか、お前ら最高。バカミスの登場人物はこーでなくっちゃな!


舞台となる館は怪しさ満点の見取り図付きで「どーみても何か仕掛けてあります本当にありがとうございました」と誰もが思ってしまうほど。この過剰なまでのサービス精神、何とも作者はわかってる人だな!つーかこの豪快極まりないトリック、バカミス以外の何と呼べばいいのかっ!否呼べない。呼べるわけなかろう・・・ッ!つーか見せ方(出し方?)を変えればもっと「うは、そーきますか」と納得のいくシチュエーションに仕上げられたろーに、あえて本作のシチュエーションでこのトリックを用いてくるあたり、やはり作者は十分過ぎるほどわかっている人だな!ぐっじょぶだっ!


つーわけで、その、何だ、キワモノ好き以外は手を出すなっつー結論でひとつ。・・・あー、島田御大の初期作である某館ものが好きな人なら本作も気に入る可能性大っすな。ワシとしては十分以上に楽しみましたぜ。