小説感想 石持浅海「人柱はミイラと出会う」



人柱はミイラと出会う

人柱はミイラと出会う


留学生リリー・メイスは、日本で不思議な風習を目にした。建築物を造る際、安全を祈念して人間を生きたまま閉じ込めるというのだ。彼ら「人柱」は、工事が終わるまで中でじっと過ごし、終われば出てきてまた別の場所に籠る。ところが、工事が終わって中に入ってみると、そこには知らない人間のミイラが横たわっていた。


黒衣、お歯黒、参勤交代───。パラレルワールドの日本で展開する、奇っ怪な風習と事件の真相とは?



ち、ちがう!こはバカミスなどではあらぬ!


パラレルワールドの日本を舞台にした連作短編集。設定だけ見ると、かの山口雅也氏の傑作「日本殺人事件」と似通っているゆえに「また愉快なバカミスを・・・っ!」と思っていたんですけれども。*1 一読後、その印象はまったくもって覆されました。実にまっとうなガチ本格。「特異な世界を構築し、その中でのみ通用するロジックでミステリを構築する」とゆー石持氏お得意(?)の手法で生み出されたこの作品、実にどの話もクオリティー高くってワシもう大満足ですよ。(前半と後半の作品でちと温度差が感じられましたけど、それでも十分面白かったっす)


ものすごーく読みやすく、設定の割にクセもなく、オチも上々とくれば「面白かったなぁ」以外の感想があんまでてこないのも世の理。本格ミステリ好きなら四の五の言わず読んで幸せな気分になればいいさ!つーかなれ。

*1:ちなみにワシは「続・日本殺人事件」収録の「実在の船」が大好きっす。あのミステリから逸脱していく様がたまらん