小説感想 夢枕獏「魔獣狩り 新装版」



魔獣狩り (ノン・ノベル)

魔獣狩り (ノン・ノベル)


<精神(サイコ)ダイバーとは人間の頭脳に潜入し、その秘密を探り出す特殊能力を持つ超戦士である>
聖域高野山から空海即身仏が盗まれた。密教術の天才美空と精神ダイバー九門鳳介が謎を追った。待ち受ける秘密教団を操る黒御所、獣人蟠虎と獣師猿翁。さらに蟠虎への復讐に燃える戦鬼文成仙吉が加わり、凄絶な闘いが開始された…。日本の闇を支配する黒御所が狙う空海への精神ダイブの目的とは?次々と暴かれる巨大な謎とは?


伝説のエンターテインメント三部作、完全版化!
これが超伝奇最高峰だ!



すげぇ面白ーい!


・・・とはいえ、

「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった

のよーな今の獏センセイの美しすぎる文体に比べるとちと荒削りかなー、と思わないでもないですが。まぁ読みにくいでもないし、読んでると直ぐに違和感なくなるからそれは些細なことか。些細なことだな。


本作は昭和59年に刊行された魔獣狩り3部作の合本。続編の「新・魔獣狩り」が今でも連載中、とゆー何とも息の長いシリーズです。しかしまぁ、長く続いているだけのことはあります、この面白さは異常すぎ。エロス&バイオレンスとゆー典型的な伝奇もののフォーマットに則っているにも関わらず、それをあっさりと逸脱してしまうこのストーリーのパワーは一体何事かと。組織<ぱんしがる>だの、空海のミイラだの、精神ダイブだの、獣師と獣人だの、もう特盛も特盛り、最初から最後までクライマックスなテンションで突っ走るこの疾走感はほんとスゲェの一言に尽きます。


そして濃い物語には濃いキャラクターがあってこそ。ストーリーのメインを張る3人、復讐鬼・文成仙吉、精神ダイバー・九門鳳介、密教の天才・美空はどいつもこいつも「キャラが立ってるてゆーレベルじゃねーぞ!」な存在感。どいつもこいつも単独で作品のメインになれるキャラなのに、それが一度に3人も。そりゃー、これだけ濃いキャラが集まるとカオス極まりない人間ドラマが繰り広げられるわな。とりあえずお前ら最高。


個人的にはもちっとラストにページを割いて欲しかったかな、とゆー気がしますが・・・。ま、そんな不満を消し飛ばすほど面白かったし、十分キレイにまとまっているので何ら問題はないか。つーか続編は一体どんな話になるんだ?すげー気になる・・・。(一応「新・魔獣狩り」に至るまでの作品は全部抑えたので順次読んでいきまっしょい)


つーわけで個人的にはすげーオススメしたい作品。エロス&バイオレンスかつ伝奇系アクション小説がお嫌いでなければ是非是非。