小説感想 川又千秋「幻詩狩り」



幻詩狩り (創元SF文庫)

幻詩狩り (創元SF文庫)


その"詩"を読んではならない。狩りたてろ。


1948年。戦後のパリでシュルレアリスムの巨星アンドレブルトンが再会を約した、名もない若き天才詩人。彼の創りだす詩は麻薬にも似て、人間を異界に導く途方もない力をそなえていた。この世には、けして読んではならない詩が存在するのだ・・・。時を経て、その詩が昭和末期の日本で翻訳出版された。そして、それを読む者たちは、ひとりまたひとりと詩に冒されていく。言葉のもつ魔力を描いて読者を翻弄する、川又千秋ならではの言語SFの粋。日本SF大賞受賞作。



川又千秋氏と言えば戦記ものの作家さん、とゆーイメージなワシだったのですが・・・。こーゆーものも書く人だったのかぁ。いやもう脱帽。そして五体投地。恐ろしいまでのホラーっぷりであり、予想のナナメ上を行くSFっぷりでしたぜ。終盤における予想外のスケールUPにゃぁNOBさん口あんぐりですよ。人によっては「これはねーよ」と思われるかもしれませんけど、ワシはこーゆーの大好きだなぁ。こーゆー無茶な展開をしてこそのSFよ。


作中で触れられる"詩"については序文程度しか読むことができないんですけど、その殆ど書いてないってことが逆に想像力を刺激し、読み手にじわりと恐怖感をもたらすっつー作りが実にナイス。"詩"に取り付かれていく人々の描写とか、読んでてゾクゾクしましたよ。(この辺も割とさらりと流しているので、もちっとページを割いてほしかったかも)


こんなステキな本を復刊してくれた創元SF文庫の仕事っぷりにはぐっじょぶ、とゆー他ありません。めっちゃ面白かったです、ささ未読の人は是非是非。