小説感想 夢枕獏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(全4巻)



沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1


貞元二〇年(西暦八〇四年)。唐の都、長安では、妖異な事件が続いていた。役人・劉雲樵の屋敷に猫の妖物が憑依し、徳宗皇帝の死を予言。また驪山の北にある綿畑では、皇太子・李踊が病に伏すことになるとの囁き声が聞こえてきたという。そしてこの二つの「予言」は、やがて現実のものとなった・・・。
同年、遣唐使として橘逸勢らとともに入唐した、若き留学僧・空海。洛陽の街での道士・丹翁との邂逅を経て、長安に入った彼らは、やがて劉家の妖物に接触することとなった。劉はすでに正気を失っていたが、空海は、青龍寺の僧・鳳鳴とともに悪い気を落とし、事の次第を聞くことになった・・・。



たまらぬお話でありました。


獏センセイが17年も連載して完結させたお話を、2日がかりで一気読みするこの愉悦。トイレに行くのもご飯食べる時間も惜しみ、貪るように読みふけりましたよ。いやー、獏センセイやっぱりすげぇなぁ。空海の中国時代の話ってだけでワクワクものなのに、加えて白楽天やら楊貴妃やら玄宗皇帝やら阿倍仲麻呂やらを登場させて虚実の境界線をあっさりと越えてしまうようなストーリーを組み上げてしまうとは。序盤からかなりテンション高い展開ですが、3巻あたりからの盛り上がりっぷりはマジに異常。鬼との宴により全てが収束する4巻は最初からクライマックス状態で、ワシはもう息をつく暇もなくページ捲ってましたよ。素晴らしき奇想、素晴らしき文体、もうお美事としか言いよーが無いっす。


あと忘れちゃいけないのが獏センセイが生み出す魅力的なキャラクター。本作でもその能力は余すところなく発揮されており、どいつもこいつもたまらぬ魅力を発揮しております。つーか空海の友・橘逸勢のキャラ立ちっぷりはやばい、マジやばい。萌える。(萌えるな)


獏センセイのファンのみならず、伝奇系のお話がお好きならば是非にオススメしたい超骨太の逸品。すっげぇ面白いっすよ!今はノベルス版で入手可能なので、割とお求めやすいかと思われます、ささどぞどぞ。