小説感想 ウィリアム・ブリテン「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」



ジョン・ディクスン・カーを読んだ男 (論創海外ミステリ)

ジョン・ディクスン・カーを読んだ男 (論創海外ミステリ)


巨匠J・D・カーに憧れ、自ら密室殺人を企てる青年。
クイーン顔負けの論理で謎を解く老人。
身に覚えのない手紙を受け取ったアメリカ在住のワトスン。
ユーモラスな結末の表題作をはじめ、「エラリー・クイーンを読んだ男」、「コナン・ドイルを読んだ男」等、ミステリへの深い愛情とあざやかな謎解き、溢れるユーモアで贈る<〜を読んだ〜>シリーズ全十一編。
付録として、チャールズ・ディケンズの愛読者が探偵として事件に挑む「うそつき」等三編を収録。EQMMの常連作家ブリテンによる、珠玉のパロディ群をご堪能あれ。



これはとてもいい短編集。


表題作「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」は十人読んだら十人が「馬鹿だなぁ」と、とてもイイ笑顔を浮かべられる素敵極まりないバカミスの極北とも言える作品なのですが・・・。いや、ワシこの短編はその昔、別のアンソロジーで読んだことがあってですね、そのインパクトが強かったので「他の作品も狂ったバカミスばっかりなんだろ?」と思ってたんですよ。でもその期待は良い意味で裏切られてしまった罠。他の収録作は実にまっとうなパロディかつ本格スピリット溢れる作品ばかりで、なんかもう読んでて「ブリテンは本当にミステリ好きなんだなぁ」とワシ思わず感動すら覚えてしまいましたぜ。


「エラリー・クイーンを読んだ男」の堂々たるクイーンらしさや、「ダシール・ハメットを読んだ男」のラストの文章、「アイザックアシモフを読んだ男たち」のタイトルだけでどんなオチを迎えるかわかりそーなベタな話、「読まなかった男」の奇妙(?)な味、「アガサ・クリスティを読んだ少年」の微笑ましさ、その他どれをとっても素晴らしいとしか言いようがありませぬ。付録として収録されたノンシリーズの3作もかなりのクオリティだし、ほんとこれはいい短編集。論創社ぐっじょぶだっ!


別に元ネタ知らなくても楽しく読めるので、興味がある方はお気軽に手を出してみるといかがでしょうか。大丈夫、ワシも元ネタ知らんのいくつかあったよ(;´Д`)