小説感想 D・M・ディヴァイン「悪魔はすぐそこに」



悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)


ハードゲート大学の若き数学科講師ピーターは、チェスの最中に亡父の友人である同僚のハクストンから助力を請われた。横領の嫌疑を掛けられて免職の危機にあるというのだ。しかし教授たちによる審問の場で、ハクストンは脅迫めいた言葉を口にしたのち、不審死を遂げる。次いで図書館で学生が殺され、名誉学長の暗殺を仄めかす脅迫状が学長宛に舞い込んだ。彼は式典のために近く大学を訪れる予定だが・・・。翻弄される人々を嘲笑うかのごとく相次ぐ事件は、関係者の過去を炙り出すように、八年前に起きたある女学生の死へと収斂してゆく。クリスティが絶賛した、英国探偵小説の実力派が贈る傑作、本邦初訳。



何というテクニック・・・!


多視点による騙りの妙技、濃密に描写される人間関係、張り巡らされた大胆かつ繊細な伏線。犯人が明らかになった瞬間、「あー!そーゆーことかーっ!」と脳内で作中の伏線が一瞬にして繋がり、すげぇ腑に落ちるとともに訪れるカタルシス。うむ、この感覚、これぞ本格ミステリの醍醐味よのう。・・・つーか何なんだよこのミスディレクションの巧みさは(;´Д`) 目眩ましのテクニックが半端じゃねぇぜ!「クリスティが絶賛した技巧派」とゆー謳い文句はなんら偽りなしだな!


・・・つーかぶっちゃけた話、ワシ、最後まで犯人まったく見当がつかんかったとです。・・・くぅぅ、無念!無念すぎる・・・!(伏線は大胆に張っているので、気づく人はあっさりと気づくかもだ)


まぁ地味な作品かつ「渋いねぇ」としか言い様がない作品なのですが、良質な本格ミステリでありますゆえ海外系の作品がお嫌いでなければ是非ともオススメしたい作品でございます。創元さん、できればミステリボックスから出ていた過去作品を含めてディヴァインの著作を全部出版してくれ、くれよぅ。