小説感想 矢作俊彦「THE WRONG GOODBYE」



THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ

THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ


神奈川県警の刑事・二村永爾は、殺人事件の重要参考人ビリー・ルウの失踪と関わった嫌疑で捜査一課から外されてしまう。事件直後、ビリーが操縦していたジェット機が台湾の玉山の上空で姿を消したことを知らされるが、二村のもとにビリーからの手紙が届く。一方、横須賀署の先輩刑事・佐藤から、国際的な女流ヴァイオリニスト、アイリーン・スーの養母である平岡玲子の捜索を私的に頼まれる。玲子のマンションで、二村は壁に拳銃弾を発見、彼女が事件に巻き込まれたことを知る・・・。


「リンゴォ・キッドの休日」(78年)「真夜中へもう一歩」(85年)に続く、二村永爾シリーズの最新作!!



濃密かつ華麗な比喩に満ち満ちた文章、ユーモア溢れる洒落た会話、凝ったプロット、タフ(であろうとする)な刑事、とくればこれはもう極上のハードボイルドと言っても過言ではないでせう。ましてやタイトルから連想できるよーに、本作はチャンドラーの「THE LONG GOODBYE」のオマージュ作品でありますゆえ、なんつーか読んでるだけでウットリしてしまう程でございます。つーか二村かっこいいよ二村。「THE LONG GOODBYE」のオマージュであるがゆえに、内容がそれと非情に酷似しているとゆー点についてはまぁ目を瞑れ。(「THE LONG GOODBYE」を知らなくても知ってても楽しめることに間違いなないけどさ)


つーか真っ当なハードボイルドであることに間違いないんだけど、何だか酷くパロディちっくな印象を受けたこともまた確か。チャンドラーのオマージュ作品だから、っつー訳じゃなく、何かもっと根っこ部分に感じたっつーか・・・。うーん、何だろこの感じ。この辺の違和感が「LONG」と「WRONG」に引っかかってるのかな?


ま、素晴らしい極上のハードボイルド作品でありますゆえ、「兎に角文章と会話に痺れたいんじゃい!」とゆー方にオススメです。確か来月あたり文庫化するはずなので、お求め易くはなるはずだしね。