小説感想 荒山徹「サラン 哀しみを超えて」



サラン 哀しみを越えて

サラン 哀しみを越えて


日本と朝鮮、その知られざる物語。


秀吉の半島出兵による戦乱の中、両親をなくした朝鮮の少女「たあ」。しかしその後「たあ」の心の支えとなったのは日本の武将・三木輝景だった。輝景へのサラン(=愛)を抱きながら、「たあ」がたどる数奇な運命は―。愛と憎しみ、そして捨てられぬ「意地」を描いた荒山徹待望の作品集。



フリーダムにも程があるぜ荒山センセイ!


荒山センセイは朝鮮を狂おしいほどに愛している、ってーのは皆様既にご承知のとおり、もはやコモンセンスといっても過言ではない周知の事実だと思うのでありまして、本作もまた朝鮮ネタが呼吸するがごとく当たり前のように使用されているのであります。構成としては独立する5編の短編から成っており、どの話も朝鮮と日本という文化と人種の壁に阻まれる人々の悲哀を描いた感動作が目白押しでありまして、荒山センセイお得意の「朝鮮妖術」も「朝鮮柳生」も何一つ出てこない、どこに出しても恥ずかしくない真っ当な王道の伝奇小説でございました。荒山初心者には丁度よい濃度の作品なのかも知れません。・・・ラストの「サラン 哀しみを越えて」のネタに気づくまでは本気でそう思ってましたともさ、ええ!


・・・えーと、これって、つまり、アレってことですよねセンセイ?な、なんという神をも恐れぬ所業なんだ・・・っ!やはり荒山センセイは狂っておる・・・!(注:もちろんいい意味で) つーかいくらなんでもこのネタはちょっとフリーダム過ぎるぜセンセイ(;´Д`)


もちろん気づかなけりゃ何ら問題なくスルーできる程度の仕掛け(?)なんですが、多少訓練された伝奇小説好きなら間違いなく気づく(ワシ程度の読み手でも気づいたネタだし)為、恐らくは本書を読んだ90%ぐらいの読者は読了後 ( ゚д゚)ポカーン な表情を浮かべたのではないでしょうか。だがそれがいい。この狂気とバカ要素こそ荒山伝奇よ!面白すぎるのでもっとやってください。


つーわけで、普通に読むと王道の伝奇小説、ネタに気づけば一瞬にしてバカ伝奇に化けるとゆー何とも業の深い作品。いやーワシとしてはもう大満足でしたよ!これは積んでる他の荒山作品にも期待がかかるってもんだぜ!