小説感想 マイクル・コナリー「夜より暗き闇」(上下巻)



夜より暗き闇(上) (講談社文庫)

夜より暗き闇(上) (講談社文庫)



夜より暗き闇(下) (講談社文庫)

夜より暗き闇(下) (講談社文庫)


心臓病で引退した元FBI心理分析官テリー・マッケイレブは、旧知の女性刑事から捜査協力の依頼を受ける。殺人の現場に残された言葉から、犯行は連続すると悟ったテリーは、被害者と因縁のあったハリー・ボッシュ刑事を訪ねる。だが、ボッシュは別の殺しの証人として全米が注視する裁判の渦中にあった───。


殺人現場に置かれていたフクロウ像の意味は何か?捜査を進めるうち、テリーはすべての手掛かりがボッシュを犯人と名指ししていることに気付く。一方、裁判で苦戦中に殺人容疑をかけられ、窮地に陥ったボッシュは思いがけない行動にでる。現代ミステリーの雄コナリーが、人の心の奥深くに巣くう闇を抉る。


心の闇を覗く者はそこで迷い、闇に取り込まれる───。



ハリー・ボッシュ・シリーズ7作目でありテリー・マッケイレブ・シリーズ第2作である本書。ちょい役ですけど「ザ・ポエット」のマカヴォイも登場するっつーこの豪華競演っぷり。そこに用意された事件はこの3大キャストに相応しい、実にコナリーらしい捻りが効いたものでした。


本作の内容としてはマッケイレブとボッシュが共に協力して犯人を追う、というベタな展開・・・なんてことにはもちろんならず。そこはコナリー、ちゃんと捻ったプロットに仕上げておりまする。なんとボッシュは殺人犯としてマッケイレブから容疑をかけられてしまうっつー容赦ない展開。引退した身とはいえ、有能だった元FBIプロファイラーの目を通してプロファイルされるボッシュ。はたして彼は犯人足りえる存在なのか?とゆー「他者から見たハリー・ボッシュ」という点を掘り下げているのが本書なのでありますよ。(そのためボッシュの一人称視点は割と少な目)


そして何ゆえボッシュに容疑がかけられることになったのか?殺人犯は彼なのか?という問題の解もまた実に捻りが効いており、ここにコナリーの半端ではない職人魂、超絶技巧を駆使したプロットの妙技を味わうことができるのでありまする。ラストのラストまで「心の闇を覗く者はそこで迷い、闇に取り込まれる───」というキーワードが実に心に残り、なんとも言えぬ余韻を残す、まっこと素晴らしいミステリでございました。


・・・まぁシリーズも7作目だから本書から読めっつっても無理な話だよなぁ(;´Д`) 本作でも過去作の某ネタがばらされてるし。それでもワシはこの作品をオススメしたいので、故にシリーズ1作目「ナイトホークス」から手にとって貰いたいところ。いや、ほんと面白いですってコナリー!