小説感想 牧野修「楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史」




夢を見ない理由、死体に似た街、腐敗してゆく自分、地下室で蠢く父、時の王国におわす神、娼婦工場の太った女、演歌と神秘主義の密接な関係、妄想を媒体にする言語人形───現実の皮が剥がれたときに見え隠れする幻覚妄想恐怖戦慄神秘奇蹟を、ヒステリーの治療過程に見立てて並べてみせた、凄絶作品集。『傀儡后』で宇宙的悪夢を描いて日本SF大賞を受賞した牧野修が虚空の果てに見いだした、甘美なる知恵に耳を傾けよ!



す、すげぇなこの言語センス。


異形コレクションとかSFバカ本とかに掲載された作品をまとめているので、基本異色ホラーSF風味な作品や奇妙極まりない作品ばかりなのですけど・・・。なんつーか、読んでて圧倒されるのはやはり牧野氏の言語センスか。兎に角「何でこんなこと思いつくんだ?」と言わんばかりの狂気と電波に満ち溢れたステキ極まりないカオス文章。収録作「インキュバス言語」に至っては「ぜ、ぜってー何かトリップしてるよこの人!」(注:最上級クラスの誉め言葉)的な読んでて眩暈がする文章でございます。ノリノリだな牧野氏。あと「演歌の黙示録」のバカっぷりも見過ごせねぇよな。人類滅亡に至るプロセスを仔細に描いた超絶おバカSF、このオチは吹かざるを得ないよ(;´Д`)


しかしワシのツボを最もついたのは「憑依奇譚」、「逃げゆく物語の話」の2作。両者ともに見せ方は通常とはかなり異なるのですが、かなり良質のボーイ・ミーツ・ガールものと言えまして、このジャンルが大好物なワシとしてはもう震えがくるほどに気に入ったのですよ。つーか「逃げゆく物語の話」のラストはマジに鳥肌ものだった、あのセンスにはほんと脱帽だぜ・・・!


いじょ、ワシ的にはものすごーく面白かったです。よし、さっさと積んでる「傀儡后」も読もっと。