小説感想 似鳥鶏「理由あって冬に出る」



理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)


某私立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい───。吹奏楽部は来る送別演奏会のための練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信頼性に欠ける、正しいことを立証するには第三者の立会いが必要だ。・・・・・・・・・かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた!にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。



表紙から「ボーイ・ミーツ・ガールの学園青春ミステリ?」と連想したものの、実際の内容は割と群像劇ちっくな学園青春ミステリものでありちょいと意表を突かれてしまった罠。つーか語り手の葉山君が結構いい味出してるのと、軽妙な文章が心地いいのとでさらりと読んじゃいました。ネタも割と「無茶するなー」とゆーバカミスちっくなものであるし、奇天烈なキャラ、学園もの独特の雰囲気、そして多少苦いラストと短い中にいろいろ詰め込まれていて、ほんとこれは結構な良作なのではないでしょーか。コミカルっつーよりはユーモアちっくな内容と表現するほーが適切のよーな気もするけど。


独特の味がある作品だとと思いましたゆえ、是非とも作者の中の人はこの味を失わないで次回作も頑張って欲しいところです。いや、ほんと面白かったよ。