小説感想 飛鳥部勝則「堕天使拷問刑」



堕天使拷問刑 (ハヤカワ・ミステリワールド)

堕天使拷問刑 (ハヤカワ・ミステリワールド)


両親を事故で亡くし、母方の実家に引き取られた中学1年生の如月タクマ。が、そこではかつて魔術崇拝者の祖父が密室の蔵で怪死した事件が起きていた。さらに数年前、祖父と町長の座をめぐり争っていた一族の女三人を襲った斬首事件。二つの異常な死は、祖父が召喚した悪魔の仕業だと囁かれていた。そんな呪われた町で、タクマは「月へ行きたい」と呟く少女、江留美麗に惹かれた。残虐な斬首事件が再び起こるとも知らず・・・


月が悪魔を照らした時、ぼくはきみに恋をした。ジョン・ディクスン・カー+ボーイ・ミーツ・ガール。本格怪奇派の著者が仕掛ける純愛と推理の融合。



素晴らしすぎるぜひゃっはー!


本の帯に書いてあるガジェットをちょいと引用。

一瞬にして切られた母娘3人の首/捩られて関節のなくなった老人の死体/悪魔の召還/ツキモノイリとツキモノハギ/私刑と死刑/町を這うもの/赤い蟹女と蟹子供/獣姦坊主/オカルト研究/ドラキュラとミイラ男/バベルの塔を髣髴とさせる美術館/月と少女



こいつを一読して何か惹かれるものがあるなら即買いだと断言いたします。その期待はまずもって裏切られないことをワシが保証いたしませう。・・・おめーの保証なんてまったく信用ならねーよ!とゆーツッコミはスルーの方向でひとつ。つーかワシの保証が当てにならないとご存知の諸兄はこんなブログなんて読まずに今週のチャンピオンでも読んでるといいと思うよ。思うよ!


横溝世界観的な民俗ホラー+洋風オカルトといった舞台設定の妙技もさることながら、それを支える構成力と文章力も見事。1部「アンダー・ザ・ムーン」2部「アンチ・バベル」で積み重ねたホラー的要素が結実する3部「天使が現われなければならない」の狂騒っぷりはもう読んでて鳥肌ものですよ。その狂騒っぷりが一段落したところで明らかになる真実は「ええー!・・・い、いやまぁ有りだな。有り」と思わせられる何とも無茶なトリック(?)であり、バカミスをこよなく愛するワシとしてはもうこれ以上ないってくらいに幸せになれるものでありました。(・・・い、いやバカだけじゃなく唸らされるネタもありますよ?)


また作中に織り交ぜられたメタ的な趣向も巧く機能しておりまして、それが炸裂した瞬間はワシもう思わず泣きそうになっちゃったよ。ここまでカタルシスを感じたミステリはほんと久々。つーかボーイ・ミーツ・ガールを愛し本格ミステリを愛するワシとしては本書はもう神ですよ神。誰が何と言おうとワシは本書を断固支持する所存であります。いやー、ほんと面白かった。本格ミステリ最高!ボーイ・ミーツ・ガール最高!


つーわけで未読の人はさっさと読むがよかろうよ、と思うNOBさんでしたとさ。