小説感想 パーシヴァル・ワイルド「検死審問 ─インクエスト─」



検死審問―インクエスト (創元推理文庫)

検死審問―インクエスト (創元推理文庫)


これより読者諸氏に披露いたすのは、尊敬すべき検死官リー・スローカム閣下による、はじめての検死審問の記録である。コネチカットの平和な小村トーントンにある、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件の真相とは?陪審員諸君と同じく、証人たちの語る一言一句に注意して、真実を見破られたい───達意の文章からにじむ上質のユーモアと、鮮やかな謎解きを同時に味わえる本書は、著名な劇作家ワイルドが、余技にものした長編ミステリである。江戸川乱歩が激賞し、探偵小説ぎらいだったチャンドラーをも魅了した幻の傑作、待望の新訳。



こいつぁすげぇぜ!


ふつーの田舎のおっさんといった感じの人から一癖も二癖もありそーな人まで、多種多用な証人の証言から真相を導きだす、なんともイカす異色なミステリ。そこで語られる証言から得られる錯綜した人間関係、そして証言に張り巡らされた伏線など、実に巧妙に描写されているあたりが何ともステキ極まりないです。また「チャンドラーが誉めた?なら大して本格要素がないんだろ」と思っているとラストで「うは、本格じゃんよこれ!」とガツンと脳天直撃な真相が待ち受けているのもぐっど。いやー、ほんと巻末解説で杉江松恋氏が触れているよーに、再読したくなる魅力を持った作品だなぁ。古い作品なんですが、一読「まぁ古典だし仕方ないな」的印象を持たせないあたりほんとすげぇ作品ですよこれ。


つーわけで問題なくオススメできる作品です。古典ファンのみならず、海外ミステリに抵抗なけりゃ広くオススメしたいところ。