小説感想 土屋賢二「ツチヤの口車」



ツチヤの口車 (文春文庫)

ツチヤの口車 (文春文庫)


雨足が強まってきた。線路沿いの薄暗い夜道を歩いていた私は、傘をさそうと立ち止まった。すると、猛スピードで走ってきた車が、悲鳴のように甲高いブレーキ音と立てて急停止した。真っ赤な車から現われたのはあの貧相な男。今夜も、身の毛もよだつ理屈の数々で、私を口車に乗せようとする。・・・完敗ね。また笑ってしまったわ。



三段論法のよーで三段論法でない論理やら、詭弁に詭弁を重ねて詭弁でまとめあげた論理やら、息を吸って吐くように嘘をつくやり口やら、つまりはいつもどーりの土屋センセイのおバカエッセイ集であり即ちニヤリ笑いが止まらないワシでしたとさ。


以下、まえがきより冒頭を引用。

この「まえがき」を読んでいる人はどうせ買わないと思うが、本書は「週刊文春」連載のコラムを集めたものである。
どうせ買わないと判断するには根拠がある。わたしは本の購買活動を研究してきた。とくに、わたしの本を買わないのがどんなタイプの人間であるかを書店で観察してきた。その結果分かったが、買わない人のタイプには三種類ある。


1.わたしの本を手にとって読む人。
2.わたしの本を手にとっても読まない人。
3.わたしの本を手にとらない人。


この研究成果から、本書を手にとって読んでいる人は買わないと判断されるのである(わたしの研究は最初、どんなタイプの人が買うかをテーマにしていたが、いくら観察しても買う人を目撃できないため、買わない人の研究にテーマを変更したのである)。



こんな感じで延々と続くエッセイ集です。ちょっとでもニヤリ笑いしてしまった人なら間違いなく愉しめるはず。下らない話を読んで「くだらねー」と思いたい方に特にオススメかな。毎日ちまちま読むといい感じに幸せになれると思いますぜ。