小説感想 ロジャー・スカーレット「ビーコン街の殺人」



ビーコン街の殺人 (論創海外ミステリ)

ビーコン街の殺人 (論創海外ミステリ)


ビーコン街の屋敷のパーティに招待された弁護士アンダーウッド。彼が帰宅しようと席を立ったそのとき、女性の悲痛な叫び声がした。屋敷の主人サットンが二階の一室で銃殺されていたのだ。部屋の中には婦人がおり、傍らには銃があった。当然彼女に容疑がかけられる。簡単に解決する事件だと思われた・・・。
江戸川乱歩らによって戦前から紹介されていた本格派スカーレットのデビュー作を初完訳。旧邦題「密室二重殺人事件」。



「エンジェル家の殺人」で古典ミステリファンにはお馴染みスカーレットのデビュー作。旧邦題が「密室二重殺人事件」と聞けば、「あーあれ?」と思い当たる古典ファンは多いのではないでしょーか。


原著は1930年、いわゆる英米探偵小説の黄金期に発表されているのですが・・・。うーん、トリックがちょいと弱い気がします(でもデビュー作だし、こんなもんかな?)が、まぁ全体的にはよくまとまった佳作っつー印象でございます。ネタを小出しに解明していくので途中で中だるみを感じさせないあたりにデビュー作ながら早くも巧みの技を感じますな。


ケチを付けるっつーか読了後に気になったことがあるんですが、ネタバレになるから書きたくても書けないんだよなぁ(;´Д`) 否、トリック的に無理があるっつーとかのツッコミじゃなく、構成的にちょいとねぇ、つー点で。(でもそーゆーミステリ他にもあるから、これは欠点にはならないか?)


ま、派手な仕掛けなどはありませんが、渋く仕上がった古典ミステリなのでその手のファンなら是非に。