小説感想 夢枕獏「遥かなる巨神」




その途轍もなく大きな<巨人>は、一定周期で現れ、ただ人々の上を歩いてゆくのだった。それは進化の輪から完全に独立した存在なのだ。幼少時に愛する姉を生贄として踏み殺された青年は、何度も<巨人>に挑みかかるのだが───表題作ほか、どことも知れぬ宿で二人の人物が酒を酌み交わす「蒼い旅籠で」、雪山で遭難した男の幻想譚「山を生んだ男」など、宇宙と人間の姿を凝縮してみせた傑作群に加え、<サイコダイバー>シリーズの原型作となった「てめえらそこをどきやがれ!」など、最初期に書かれた珠玉の作品を集成。幻のデビュー作「カエルの死」にはじまる、数々のタイポグラフィクション<活字絵物語>も収録した。



獏センセイの最初期幻想SF集。伝奇だろうが幻想だろうが、やはり獏センセイはセンセイだなぁとゆーお話揃いで大いにワシ満足。つーか伝奇的作品のみならず、幻想的な作品もキレがよくて改めて獏センセイの作風の広さと技量に恐れ入った次第。初期のころなので今程文体にクセがないため、割と広くお勧めできる作品集なのではないでしょーか。収録作の芸風が幅広いため、獏センセイの作品に触れたことない方への入門としても中々よろしいかと。


収録作の中では「山を生んだ男」「てめえらそこをどきやがれ!」「遥かなる巨神」が別格といってもいいほどの内容なのですが、それ以外では「千日手」とか「木犀のひと」「消えた男」あたりの奇妙な味の作品が印象に残りました。いやー、ほんと獏センセイの作品は面白いなぁ。