小説感想 夢枕獏「神々の山嶺」(上下巻)



神々の山嶺(上) (集英社文庫)

神々の山嶺(上) (集英社文庫)


カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典!



神々の山嶺(下) (集英社文庫)

神々の山嶺(下) (集英社文庫)


その男、羽生丈二。伝説の単独登攀者にして、死なせたパートナーへの罪障感に苦しむ男。羽生が目指しているのは、前人未到のエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂だった。生物の生存を許さぬ8000メートルを越える高所での吐息も凍る登攀が開始される。人はなぜ、山に攀るのか?永遠のテーマに、いま答えが提示される。柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典!



神以外の何者でもないぜこいつぁ!


さすがは獏センセイ、何を書かせても面白いぜ。「山を登る」とゆーストレート(それまでに紆余曲折はありますが)なお話ではありますが、なんつーか、もうね、文章から溢れてくるパワーがハンパありません。物語終盤の登坂シーンとか、高山病に陥った人間の思考のトレース部分とか、読んでて息が詰まるほど濃密。ありがちな表現ですが、ほんとページを捲る動作すらもどかしくなる程のめり込んで読みふけりましたぜ。特に22章「神々の座」は何度読んでも泣けるなぁ。


読んでて圧倒される物語っつーのは滅多にお目にかかれるもんじゃありませんぜ。問答無用の大傑作である本書、さぁ読めったら読めっ!