小説感想 W・H・ホジスン「幽霊狩人カーナッキの事件簿」



幽霊狩人カーナッキの事件簿 (創元推理文庫)

幽霊狩人カーナッキの事件簿 (創元推理文庫)


電気式五芒星と古文献を駆使し、オカルトと科学を混合させた技術で怪奇現象に立ち向かう、名うての"幽霊狩人"───トマス・カーナッキ。彼が事件をみごと解決して自宅に帰還するたび、わたしたち友人は食事に招かれ、その冒険譚に耳を傾けるのだ。無人の空間で起こった死傷事件、不気味な口笛の鳴り響く部屋の怪談、馬の魔物が出現する奇譚等々、ドイルの創造した名探偵ホームズと同時代に発表され、その怪奇版として名高いシリーズ全作を新訳で贈る。本邦初訳の資料的作品1編を含む、全10編を収録した。



これはバカミスと言わざるを得ない・・・ッ!


怪しげな文献「ジグザンド写本」だの「サアアマアア典儀」の内容を引用(勿論作者の創作です)し、「これは『サイイティイイ現象』だ!」だの「『アイイリイイ現象だと・・・!』」と現場で驚愕し、挙句の果てに「結界を作ろう」と電気式五芒星(蛍光灯のよーなもので作った五芒星をイメージされたし)を持ち出す、そんな愉快なカーナッキさんが大好きです。まっことオカルトど真ん中の作品、いやーやっぱ昔の本は夢があっていいな!


・・・とまぁビジュアル的なものは割と愉快なんですが、内容はこれがどーして一筋縄では行かない罠。ちょいとネタバレかもしれませんが・・・この作品、話によって「実は人間の手によって起こしていた現象でしたサーセンwww」だったり、「マジに怪奇現象だったぜ・・・!」だったりする、オカルトと本格ミステリが入り混じったカオスな短篇集なのであります。ミステリ者からすれば後者の展開は「金返せふぁっきん!」だろーし、ホラー好きからすれば前者の展開は「興ざめにも程があるぜふぁっきん!」でしょーが、その「一体どちらのオチになるんだ?」的ドキドキ感がワシとしては実にツボに入った次第。つーか本格だのオカルトだのカタイこと言わずにこの愉快な冒険譚を楽しめばいいじゃん!面白ければ全て良し。


まぁあえてツッコミを入れるならば、延々とカーナッキさんの語りで話が進むので、やたら単調に思えてしまうってのがちょいと難点かな。馴れるまで辛抱されたし。