小説感想 夢枕獏「魔獣狩り外伝 聖母隠陀羅編」




<精神ダイバーとは人間の頭脳に潜入し、その秘密を探り出す特殊能力を持つ超戦士である>

「悪霊と化した我が邸に潜り、娘を救出してもらいたい」
精神ダイバー九門鳳介に、大実業家村松重造から奇怪な依頼が届いた。弓蘭子とともに、邸に潜入した九門だったが、邸内は酸鼻を極める凄惨な光景に満ち満ちていた。なぜ、館は悪霊と化したのか・・・?



魔獣狩り」の登場人物・精神ダイバー九門鳳介を主役にすえた、「魔獣狩り」から「新・魔獣狩り」をつなぐエピソードとなる本書。・・・とはいえ、「魔獣狩り」に出てきたキャラや関連エピソードなどは殆ど語られないため、本作単独でも十分楽しめる内容となっております。


魔獣狩り」に比べるとバイオレンス&エロス要素が皆無に近いのですが、その分ホラー的な要素「悪霊化した館」「サイコダイブ」などのビジュアルイメージ的要素が強化されており、この辺のねっとりした描写は「やはり獏センセイだなぁ」と思わせるに十分な程でした。発生した事件と九門鳳介のひょうひょうとしたキャラクターが何とも言えぬ味わいを醸し出しており、中々に読み応えのある作品でございました。


つーわけで獏ファンにとっては「何を今更」的感があろう本書ですが、「新装版 魔獣狩り」あたりを読んで獏ファンになった人には読んでおいて損はない作品かと。